研究課題/領域番号 |
23K19291
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
直井 崇 弘前大学, 農学生命科学部, 助教 (30965835)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | トマト / ゲノム編集 / VIGS / アグロバクテリウム / DCL2b / DCL2d / DCL4 / PDS |
研究実績の概要 |
R5年度は、まずゲノム編集用バイナリーベクターpDeCas9をベースに、グルホシネート耐性遺伝子発現カセットをカナマイシン耐性遺伝子NPTII発現カセットに組換えたpDeCas9-KanRを作製した。次にウェブツールのCRISPR-Pを利用してトマトのDCL4、DCL2b、及びDCL2d遺伝子をゲノム編集するためのガイドRNA配列を決定した。これらのガイドRNA配列を含むオリゴDNA断片をpEn-Chimeraへクローニングした。そしてGatewayクローニングによりガイドRNA+Scaffold RNA (Cas9の足場となる配列) の発現カセットをpDeCas9-KanRへ移し替えた3つのゲノム編集用コンストラクトを作製した。 次にウイルスベクターにより一過的にDCL遺伝子の発現を抑制 (ノックダウン) する実験系 (Virus-induced gene silencing; VIGS) の検討を行った。まずトマトのフィトエンディサチュラーゼ (PDS) mRNAの部分配列を含むcDNA断片をタバコ茎えそウイルス (TRV) ゲノムRNA2発現ベクターへクローニングしたpTRV2-SlPDSi_ASを作製した。そしてこのベクターとTRVゲノムRNA1発現ベクターをそれぞれアグロバクテリウムLBA4404株にエレクトロポレーション法で導入、選抜薬剤を含むLB培地で培養後、接種源調整に用いた。そしてトマト (品種Rutgers及びMoneymaker) の本葉への接種源のインフィルトレーションまたはスプレー散布、または主茎への接種源の注入によりアグロバクテリウムを接種した。その結果、注射により接種源を注入した場合に最もTRVの感染効率が高く (10/10)、接種後10-12日頃にPDS遺伝子の発現抑制を示す葉の白色化が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
R5年度はゲノム編集用バイナリーベクターを作製しDCL遺伝子をノックアウトしたトマト系統の作出・選抜に取り掛かる予定であったが、トマトの形質転換の予備試験で使用していたアグロバクテリウムLBA4404株がトマトへの感染及び形質転換効率があまり高くなかったため、現在使用するアグロバクテリウム株の種類や濃度、接種時間等の条件検討を実施している段階である。その一方で、TRVベクターを用いた一過的遺伝子発現抑制系に関しては前述の通り条件検討が完了しており、当初の予定通り進行している。さらにトマトのDCL2b及びDCL2d mRNAの部分配列を含むキメラcDNA断片またはDCL4 mRNAの部分配列を含むcDNA断片をTRVゲノムRNA2発現ベクターへクローニングしたpTRV2-SlDCL2i_AS及びpTRV2-SlDCL4i_ASの作製も完了している。
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今後の研究の推進方策 |
R6年度は、R5年度に引き続きトマトの形質転換の条件検討を実施する。具体的には、トマトの形質転換で実績のあるアグロバクテリウムGV2260株を使用し、トマト品種Rutgers及びMoneymakerにおける最適な形質転換条件を検討する。その後、各DCL遺伝子のゲノム編集トマト系統の作出・選抜を開始する予定である。また作製したTRVベクターを用いてDCL2またはDCL4の発現を一過的に抑制したトマト (品種Rutgers及びMoneymaker) にジャガイモやせいもウイロイド (PSTVd) を接種する。そして、各DCL遺伝子の発現抑制が各トマト品種のPSTVd感受性 (または耐病性) へ及ぼす影響を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
R5年度はゲノム編集に関連する実験が予定通り進まなかったこともあり、当初予定していた物品の購入や委託解析費用の使用量が少なかった。また学会発表等に使用を予定していた旅費も使用しなかった。またゲノム編集実験の補助のため雇用を予定していた実験補助員についてもR6年度からの雇用となった。以上より、R6年度使用額が生じた。 R6年度に関してはR5年度に購入を予定していた物品の購入や委託解析を進めていく予定である。またR5年度の成果を含めR6年度には複数の学会発表等を予定しており、昨年度の分の旅費も含めて使用予定である。またR6年度はゲノム編集実験を本格的に進めるにあたって実験補助員を雇用する。そのため、昨年度人件費も含めて使用を予定している。
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