研究課題/領域番号 |
23K19311
|
研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
須藤 竜大朗 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 任期付研究員 (60981008)
|
研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
|
キーワード | 単板 / 合板 / LVL / 単板積層材 / 接着層 / 部分圧縮 / めり込み |
研究実績の概要 |
スギ単板とフェノール樹脂接着剤を用いて単板7層を重ねたLVL(繊維方向が全層同じ)と合板(繊維方向が直交する層を含む)を製造した。同様の単板を用いて接着せずに重ねたのみの試験体も作製した。接着の有無の条件の他、繊維方向・層構成・余長の有無・試験体高さの異なる試験体計240体を作製し、部分圧縮試験を実施した。 繊維方向が全層同じ試験体について、接着がある場合とない場合とでどれだけ強度が上昇したかを比較し、接着層自体の圧縮抵抗による寄与について考察した。接着によって強度は有意に上昇することが確認され、その差の絶対的な値は繊維平行方向が繊維直交方向より高かった。一方で余長の有無や試験体高さによってその値は大きく変化はしなかった。一方で強度の上昇率はどの仕様でも概ね等しかった。 繊維平行方向・直交方向のLVLの部分圧縮試験の結果から、荷重に対して繊維が平行な層と垂直な層の一層あたりの性能を計算し、単純な層の足し合わせによって合板の部分圧縮性能を推定した後、合板の部分圧縮試験の実験値と比較した。試験体高さが高くめり込み余長の長い仕様では推定値より実験値の剛性が高かった。層の繊維方向によって変形性状が変化するため、繊維方向が互いに垂直な隣接層からの変形拘束効果が予測されていたが、この結果でそれを確認できた。一方で余長が無かったり、試験体高さが低かったりした仕様では推定値より実験値の強度が低かった。繊維平行層は繊維直交層より早く降伏するが、推定では両者は独立して荷重負担するとしているため、平行層の降伏後も直交層は荷重上昇するとして性能推定を行っている。しかし実験では平行層の破壊に直交層が巻き込まれる破壊性状が確認され、これは各層が独立して荷重負担するという仮定と反するため、結果に影響したと考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究期間全体では接着の有無・層構成・余長の有無・試験体高さ・接着剤種類・樹種をパラメータとした実験を計画していた。現時点では計画全体の1/3の試験が終了している。実際に研究自体が始まったのが令和5年度の10月以降であること、実験工程の確立に時間を要することが予め想定できていたことから、前年度の2倍の実験は問題なく実施可能と考えている。また得られた結果も想定と大きく外れていなかったため、大きなトラブルは生じていない。したがって概ね順調に進展しているとみなしている
|
今後の研究の推進方策 |
新たな樹種としてカラマツ単板、新たな接着剤としてユリア樹脂接着剤を用いて同様の試験を実施する。得られた結果からLVLの接着の有無による強度上昇について、接着剤の種類や樹種がどのように影響するかを考察する。また単純な層の足し合わせによって合板の性能を推定し、合板の部分圧縮試験の実験値と比較することで、直交層による隣接層の拘束効果が樹種・接着剤種によってどのように変化するかも考察する。また材や接着に関する物性値や強度値から、前述した強度上昇や拘束効果の耐力寄与を推定可能にする手法を構築する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
実際の実験遂行にあたり、実験工程の細部を材料が来てから組む必要が生じ、その検討や追加で必要となった治具の発注に時間を要した。また材の発注から納品まで時間がかかり、年度途中から始まる研究であることも重なり、発注~納品の間に年度を跨ぐ恐れが生じた。そこで計画よりも今年度の実施する実験量を少し削減し、前述した事態が生じないようにした。それにより空いた時間を実験計画の再検討や得られた結果の分析に当て、次年度以降の研究遂行の方針を固めた。 次年度以降では今年度策定した方針にしたがい、当初次年度に実施するとしていた実験に加えて今年度実施するはずであった実験も実施し、それらの材や治具の購入代に科研費を使用する。また年度の前半には実験結果をまとめ、後半に原著論文の投稿を目指しその投稿経費や英文校正費にも使用予定である。
|