研究課題/領域番号 |
23K19344
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
西川 雅展 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任研究員 (70985184)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | 翻訳 / 植物ウイルス / 植物免疫 / 無細胞翻訳系 |
研究実績の概要 |
植物は環境変化や病原体による攻撃に応答し、複数の段階で遺伝子発現を制御している。中でもmRNAの翻訳はタンパク質の合成量を決定する重要なステップである。その調節の鍵となるのは、翻訳開始因子によるmRNAへのリボソームのリクルートであるが、植物細胞における翻訳開始の調節機構はほとんど明らかになっていない。これまでの研究で、機能未知の植物タンパク質EXA1が翻訳開始因子と協調して働くことを見出しており、EXA1は翻訳開始の調節に関与すると予想される。本研究では、EXA1の機能解析を通じて、植物細胞における翻訳調節機構の一端を解明することを目的としている。 今年度は、まずRNA免疫沈降によってEXA1と結合するmRNAの同定を試みた。しかし、EXA1タンパク質の抽出に適した条件においては免疫沈降が困難であったため、EXA1と結合するmRNAの同定には至らなかった。今後は、後述のin vitro系の利用など、実験系の変更を検討する。 他方では、EXA1がmRNAの翻訳に与える影響を評価するために、翻訳活性のレポーターとしてルシフェラーゼを利用した実験系を確立した。これにより、EXA1による翻訳制御を誘導するRNA配列を簡便に特定できると期待される。 また、タバコ培養細胞由来の細胞抽出液は高い翻訳活性を持つことが知られている。そこで、ゲノム編集によりEXA1をノックアウトしたタバコ培養細胞株を作出し、本細胞株を用いて細胞抽出液の調製を行なった。これにより、EXA1が翻訳に与える影響をin vitroで詳細に解析することが可能になると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、EXA1の機能解析のための実験系を複数確立することができた。引き続きこれらを利用して解析することで、EXA1の分子機能を詳細に明らかにできると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
今年度までに確立したルシフェラーゼアッセイ系を利用し、EXA1による翻訳制御を誘導するRNA配列を特定する。また、EXA1ノックアウト培養細胞由来の無細胞翻訳系を活用し、EXA1がmRNAの翻訳や、RNAウイルスの翻訳・複製に与える影響を詳細に解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はRNA免疫沈降とRNA-seq解析を組み合わせることによってEXA1結合mRNAの同定を計画していたが、実験系の検討がまだ必要であり、RNA-seq解析には至らなかった。次年度は、in vitro系の利用など実験系を変更してRNA-seq解析を行うことを検討する。
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