研究課題/領域番号 |
23K19397
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
櫻井 まりあ 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特任研究員 (20986385)
|
研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
|
キーワード | LRRK2 / リソソーム / αシヌクレイン / エクソソーム / パーキンソン病 |
研究実績の概要 |
本研究では、パーキンソン病(PD)病因キナーゼLRRK2に注目し、LRRK2依存的な新規細胞外放出機構の詳細な分子機構の解明とαシヌクレインの細胞間伝播に与える影響の解析を行うことで、LRRK2変異がPD発症をもたらす機序の解明を目的とする。これまでの研究から、LRRK2はクロロキン(CQ)投与などによるリソソーム過積載ストレス下においてリソソーム膜上に集積し、基質Rab10リン酸化、リソソーム酵素の細胞外放出を促進することを見出していた。CQ処理時にはLRRK2はリソソーム一重膜上に集積することからLRRK2の局在・活性制御にオートファジー分子が関与している可能性を考え、ノックダウン実験を行った結果、マクロオートファジーの開始複合体を形成するULK1, Fip200ノックダウンではLRRK2集積は抑制されなかったものの、ATG5, ATG16L1ノックダウンによっては集積が抑制された。また、V-ATPase阻害によってもLRRK2集積は抑制されたことから、LRRK2局在と活性化はCASM (conjugation of ATG8 to single membrane)に必要とされるV-ATPase-ATG16L1軸によって制御されることが示唆された。また、細胞培養上清から超遠心によって分画したエクソソーム画分では複数のエクソソームマーカーが検出され、それらはLRRK2阻害剤あるいはLRRK2やRab10のノックダウンによって減少した。また、エクソソーム画分中のカテプシンBも減少したことから、LRRK2依存的なリソソーム酵素の細胞外放出はそのほとんどがエクソソーム分泌にともなうものであることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CQ処理時のLRRK2局在・活性制御機構としてV-ATPase-ATG16L1軸が機能していることを明らかにし、論文として発表した。また、これまでに構築したスクリーニング系を用いた化合物ライブラリのスクリーニングによってCQ処理時のリソソーム酵素細胞外放出阻害剤を複数同定し、それぞれについてLRRK2の集積とキナーゼ活性への効果を検討し、クラスタリングを行った。さらに、CQ処理時に分泌されるエクソソームについてLRRK2基質やESCRT分子のノックダウン実験を行った。
|
今後の研究の推進方策 |
現在超遠心法によって回収されたエクソソームについて粒子径と粒子量の解析を行っており、これに合わせて電子顕微鏡での撮影を行う。また、リピドミクス解析も行うことにより、CQ処理時にLRRK2依存的に分泌されるエクソソームの性状解析を行う。さらに、カテプシンBとエクソソームとの関係について、リポソームを用いたin vitro解析を進める。マウスの血中や尿中におけるエクソソーム量の変化について、エクソソーム表面マーカー認識抗体を用いたアフィニティー精製法によって定量的に検出する系を確立し、Lrrk2欠損マウスやG2019S変異型LRRK2トランスジェニックマウスに対して、同定した放出阻害剤をCQと同時に腹腔内投与し、エクソソーム量の変化を捉えることでLRRK2がエクソソーム分泌に与える影響を解析する。
|