研究課題/領域番号 |
23K19398
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
齋藤 健吾 金沢大学, 医学系, 助教 (60981214)
|
研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
|
キーワード | 大脳皮質 |
研究実績の概要 |
大脳皮質は高次脳機能の中枢であり、様々な神経変性疾患や発達障害などの病変の首座であることから、その形成を制御する分子メカニズムが注目されている。ヒトなど高等哺乳動物では大脳皮質が特に発達しており、大脳皮質の表面には脳回と呼ばれるシワが存在している。脳回の存在により、限られた頭蓋容積内で大脳皮質の表面積と神経細胞の数を増やすことが可能となり、その結果として高次脳機能の発達が可能になったと考えられている。従って、発生過程における脳回の形成メカニズムは重要な研究課題であるが、マウスの大脳の表面には脳回は存在せず、従ってマウスを用いた脳回の形成メカニズムの解析は困難であることから、その実験的解析は遅れている。研究実施者の所属研究室ではこれまでに脳回を持つ哺乳動物フェレットに対する遺伝子操作技術を確立し、脳回形成メカニズムとして大脳皮質の神経細胞の増加を報告してきた。しかし発生過程において、細胞増殖終了後にも脳回形成は継続することから、神経細胞の増加以外の脳回形成メカニズムも存在するのではないかと想定されていたが、その実態はいまだに不明な点が多い。そこで本研究課題では、脳回を持つフェレットと脳回を持たないマウスを用いて比較解析することにより、神経細胞の増加以外の脳回形成メカニズムを明らかにすることを目的とする。これまでにフェレットを用いて神経細胞の増加時期以降に遺伝子発現を操作するための予備検討を行った。今後は実際にフェレットをサンプリングし、脳回形成メカニズムを詳細に解析する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスを用いて、神経前駆細胞の増加に影響を与えず、それ以降に遺伝子発現を操作するための実験技術を立ち上げた。子宮内電気穿孔法を用いてマウス胎仔にプラスミドを導入し、タモキシフェンの投与を生後のいくつかのタイミングより5日間行い遺伝子を発現させたこところ、適切なタモキシフェン投与時期を見いだすことができた。今後はフェレットのサンプリングを行い、フェレットでのタモキシフェン投与条件を確立するとともに、候補遺伝子を操作し脳回形成への影響を詳細に解析する予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでに、マウスを用いて神経細胞の増殖終了後に遺伝子操作を行うためのプラスミド構築を行ってきた。その結果、神経前駆細胞の増加に影響を与えない時期に、大脳皮質で遺伝子発現を誘導できる条件を確立した。さらにフェレット大脳へのプラスミド導入を行い、フェレットの大脳でも使用可能との予備的結果を得ている。今後は大脳へ遺伝子発現させたフェレットのサンプリングを行う。さらに脳回形成に関わることが想定される候補遺伝子群について、確立した技術を用いて神経細胞の増殖終了後における機能解析を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
脳回形成の分子メカニズム解明を目的とした実験に関して、本年度はマウスを用いた実験を前倒しして行ったために次年度使用額が生じた。高価なフェレットを新規に購入する必要のある実験は次年度に行う予定である。
|