研究課題/領域番号 |
23K19415
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
吉田 健祐 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 特別研究員 (80980375)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | 記憶再編成 / 徐波 / シナプス可塑性 / 次元削減 |
研究実績の概要 |
睡眠中の記憶再編成にはノンレム睡眠中の徐波・リプレイが関与すると報告されている。徐波は大脳皮質の神経細胞がup state, down stateを遷移することで形成される。リプレイは覚醒時の発火パターンがその後の睡眠中に再度見られる現象である。徐波中のリプレイによってシナプス可塑性が誘導されて記憶再編成が起こると考えられているが、その詳細なメカニズムは不明である。これまでの研究で、徐波の形成機構や徐波中のシナプス可塑性を表現する理論モデルを構築してきたが、より複雑な回路の学習への徐波の関与は十分に明らかになっていなかった。 この点にアプローチするために、徐波に関するモデルの構築および質的な記憶再編成に関するモデルの構築をおこなった。徐波のモデルについては、従来のモデルを拡張し、実験的に提唱されているようなシナプス増強との関連を反映したモデルを構築した。このモデルは、徐波と記憶再編成の関係にアプローチするための基盤のモデルとなることが期待される。質的な記憶再編成については、リプレイを模した効果を生かして非線形次元削減をおこなう神経回路モデルに関して、生物学的な視点から研究をおこなった。また、本モデルに関して、先行研究において測定されていたショウジョウバエの嗅覚回路における実験データを用いて検証をおこなった。比較的単純な神経回路においても、非線形次元削減と類似した計算が実現されている可能性を提唱した。 これらの研究により、睡眠中の記憶に関する表象の変化について理論モデルを用いてアプローチした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
徐波に関するモデルを構築し、また質的な記憶表象の変化に関するモデルを構築した。これらのモデルを発展させ、睡眠中の記憶再編成の神経基盤に関して、引き続き理論的に研究とおこなう。
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今後の研究の推進方策 |
上記モデルをさらに拡張し、徐波に加えて海馬のリップル波などの神経活動が学習にもたらすメリットに関して理論モデルを用いてアプローチする。また、より抽象度の高いモデルも用いながら、これらの神経活動を含め、睡眠時の神経回路変化が学習にどのようなメリットをもたらすか研究をおこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会参加のためのTravel awardを受賞し、今年度必要な旅費が減少したため。次年度の旅費に使用する。
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