研究課題
ARHGAP10遺伝子バリアントは、統合失調症の発症と強く関連する。患者由来の遺伝子バリアントを模倣したArhgap10遺伝子改変マウスは、野生型マウスに影響を与えない低用量の覚醒剤処置により認知機能障害を呈するが、そのメカニズムは不明である。ARHGAP10は、スパイン形態を制御するRhoキナーゼシグナルを制御することから、本研究では、低用量覚醒剤処置によるスパイン形態の変化の評価を行う。本年度は、その実験系の確立を行った。まず、スパインの可視化のためには、神経細胞へ緑色蛍光タンパクGFPを離散的に発現させる必要がある。脳に注入するGFPを発現するプラスミドを組み込んだアデノ随伴ウイルスベクターの力価を検討することにより、スパインの可視化に成功した。また、共焦点顕微鏡及び超解像顕微鏡によりGFP標識スパインの三次元像を取得し、Imarisによりスパインの長さ及び体積の解析を可能とした。今後は、この実験系を利用してArhgap10遺伝子改変マウス及び野生型マウスにおいて低用量覚醒剤処置後のスパイン形態を評価する予定である。また、生体マウスの脳切片及び初代培養神経細胞において、免疫染色法によるRhoキナーゼの基質であるmyosin phosphatase-targeting subunit 1のリン酸化レベルの可視化に成功した。今後は、スパインでの局在に着目し解析していく予定である。また、本研究のもう一つの目的である、神経活動の解析に使用する錐体神経細胞特異的に遺伝子組み換え酵素Creを発現するEmx1-Creマウスを繁殖させ、Arhgap10遺伝子改変マウスと交配し、Arhgap10;Emx1-Creマウスを作成した。さらに、認知機能を評価する視覚弁別試験での神経活動の評価のために必要な解析プログラムの作成を行った。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、研究遂行に必要な実験系の確立及びマウスの作成を完了することができたため。
本年度に確立したスパイン解析の実験系を用い、Arhgap10遺伝子改変マウス及び野生型マウスにおいて低用量覚醒剤処置によるスパイン形態を評価する。また、Emx1-Creまたは、Arhgap10;Emx1-Creマウスを用いて、認知機能試験時の神経活動を評価する。
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INTERNATIONAL JOURNAL OF MOLECULAR SCIENCES
巻: 24 ページ: -
10.3390/ijms242115623