研究課題
歯周炎は、口腔内宿主菌叢の恒常性が破綻し、炎症を伴う歯周結合組織や周囲骨組織の破壊を特徴とする疾患である。この疾患は、成人の歯の喪失の主な原因となるだけでなく、心血管疾患や糖尿病など様々な全身疾患の発症や増悪に関与する。そのため、歯周炎の制御は超高齢社会における健康寿命の延伸を実現する上で重要な課題となっている。しかし、病態解明において多くの進展があった一方で、炎症の慢性化や急性発作による重篤な骨破壊など、未だ本質的な部分での実態や分子制御機構については十分に理解されていない。それゆえに、歯周炎をより効果的に制御するためには新しい細胞及び分子標的の特定が急務となっている。そこで本研究では、バクテリアセンシングセルとしての骨細胞に着目した申請者の研究成果を基に、歯周病原因子に応答し活性化した骨細胞が、どのように炎症性免疫細胞を制御し、骨表面の炎症や骨吸収に寄与するのか、その分子機序を解明することを目的としている。当初の予定通り、マウス顎骨から単離した骨細胞あるいは骨細胞様細胞 (MLOーY4 cells)に、生菌Pg(ATCC33277),PgLPSをそれぞれ刺激し、Multiplex cytokine assayを行うことで、骨細胞が分泌するサイトカインを評価した。また、これらのサイトカインが、好中球やマクロファージ等の自然免疫細胞を遊走させることができることが明らかにされた。今後は、骨細胞が最も分泌するケモカインに着目し、骨細胞選択的に欠失するマウスを作製し、実験を行っていく。
2: おおむね順調に進展している
計画していた実験を予定通り遂行できている。歯周病原菌であるPgに反応した骨細胞が特異的に分泌するサイトカイン、ケモカインを評価することができ、その機能性も確認できた。また、次年度に使用するマウスの準備も概ね順調である。
これまでの実験結果を元に、歯周病原菌に応答した骨細胞が、免疫細胞の遊走だけでなく、成熟にも関与するか検討する。また、骨細胞が特異的に分泌するケモカインを標的に、骨細胞で欠失させた遺伝子改変マウスを作製し、歯周炎モデルを構築することで、生体における骨細胞が歯周炎の病態に及ぼす影響を明らかにしていく。
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J Bone Miner Res.
巻: 38(10) ページ: 1521-1540
10.1002/jbmr.4897.