研究課題/領域番号 |
23K19487
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
加藤 喬 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (60978823)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | プロテアソーム / 免疫不全 / 自己炎症性疾患 / B細胞 / 形質細胞 |
研究実績の概要 |
生体の細胞内に存在する不要あるいは合成不良のタンパク質はプロテアソームによって分解処理される。近年、プロテアソームを構成するサブユニットタンパク質の遺伝子バリアントにより、難治性の自己炎症疾患が発症することが報告されている。これまでに、我々は、自己炎症と免疫不全の複合症状を伴う患者より新規に同定されたプロテアソームサブユニットバリアント (Psmb9 p.G156D)を導入した遺伝子組み換えマウスを作製し、解析を行ってきた。そして、そのマウスでは、ヒトの患者と同様に血液中の免疫グロブリンが減少していることを明らかにした。本研究では、プロテアソームの異常がどのように免疫グロブリンの減少を引き起こしているか、そのメカニズムの分子基盤および細胞学的基盤を同遺伝子組み換えマウスの解析により明らかにする。 代表者はPsmb9 G156Dヘテロ変異マウス由来のB細胞をLipopolysaccharide; LPS 存在下にてin vitroで培養し、得られた培養B細胞の解析を行った。そして、同変異マウス由来の培養B細胞では形質細胞への分化が障害されていることを明らかにした。さらに、培養上清中のIgM、IgGも低下していることが明らかになり、同変異マウスでは形質細胞への分化が障害された結果、血液中の免疫グロブリンが減少している可能性が示唆された。続いて、網羅的遺伝子解析により、形質細胞への分化障害の原因となる遺伝子を検索したところ、形質細胞への分化に必須な転写因子群の遺伝子発現が低下している一方で、プロテアソームの機能に関連する遺伝子の発現が亢進していることが明らかになった。今後、レトロウイルスベクターを用いて、標的遺伝子の過剰発現やノックダウンを行い、形質細胞の分化障害の原因となる分子を同定していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
形質細胞への分化障害の原因となる候補分子の同定は着実に進んでいる。さらに、それら候補分子をレトロウイルスベクターで過剰発現、あるいはノックダウンする実験系も樹立した。
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今後の研究の推進方策 |
網羅的遺伝子発現解析により見出した候補分子について、発現が亢進しているものはレトロウイルスベクターでノックダウンを行い、発現が低下しているものは過剰発現を行っていくことで、形質細胞への分化が正常化するかどうか評価する。In vitroでの解析を進めて候補分子を絞ったのち、続いてはin vivo実験により、阻害剤やノックアウトでPsmb9 G156Dヘテロ変異マウスの血中免疫グロブリン減少が改善されるかどうか検討していく。
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