研究課題/領域番号 |
23K19488
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | 死細胞貪食 / マクロファージ / 低酸素 / エネルギー代謝 |
研究実績の概要 |
本年度は、低酸素下のマクロファージにて死細胞貪食時に形成される液滴様の構造物の実態について検証を進めた。1%酸素濃度で培養した骨髄由来マクロファージ(BMDM)に、緑色蛍光性グルコース類縁体分子(GFG)を添加した上で、死細胞と30-60分程共培養すると、緑色蛍光を発する数μmサイズの多数の液滴様構造物が、BMDMの細胞質に多数生成された。これがグルコースが結合するタンパク質を含む液液相分離体である可能性を検証するために、液液相分離体を溶かすとされている小化合物を培養系に添加し、その動態を顕微鏡観察したが、液滴様構造物が細胞質から消失する結果はえられなかった。また、液滴様構造物は、ライソソームやファゴソームを染色するとされている蛍光色素によって染色されなかった。これらの結果に続いて、GFGが死細胞貪食中の細胞内に取り込まれ、液滴様構造物が出現する全行程をライブ蛍光イメージングによって評価することで、液滴様構造物はピノサイトーシスによって生成された、GFGを含有するピノソームであることが明らかになった。ピノソームの多くが死細胞貪食サイト周辺で生成され、その後、GFGを含むピノソームの大部分はライソソームと融合することも観察された。しかし興味深いことに、ライソソームと融合し、ピノソーム内のpHが低下するとGFGの蛍光シグナルは急速に消失することも明らかになった。そのため、ライソソームの酸性化を標的とした蛍光色素とGFGの局在は一致しなかった。GFGの蛍光シグナルは酸性下でも物理化学的に安定であることから、酸性化が引き鉄となってピノソーム内のGFGは細胞質にリリースされていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
グルコースを含む液滴様構造物の実態を明らかする検証は首尾よく進展した。その結果、当初全く想定していなかった新たなメカニズムを示唆するデータが蓄積され、それらを検証する準備が整った。
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今後の研究の推進方策 |
グルコースを含有するピノソームが死細胞貪食サイト付近で生成され、速やかに酸性化することでグルコースを細胞質に放出している。この一連の過程は多量のATP産生が必要とされる死細胞貪食時に、グルコースを効果的に取り込み、ATP産生に消費する機構に貢献している可能性がある。蛍光イメージングによる詳細な解析をさらに推し進めると共に、ピノソームの生成機構への介入実験を通して仮説の実証に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の仮説が否定されたことで、実施した実験内容が大きく変更されたため次年度使用額が生じた。次年度は研究計画を新たな仮説に向けた内容に変更し、消耗品類を中心に支出する予定である。
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