DNAメチル化はヒトにおける癌の発展・進行において重要な役割を果たすエピジェネティック修飾の一つである事がこれまでに明らかにされてきた。我々は、致死的な治療抵抗性前立腺癌である、去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)及び神経内分泌前立腺癌(NEPC)において、DNMT遺伝子(DNMT1/3A/3B)の発現が有意に上昇している事に着目した。 結果として、NEPC細胞株を用いてDNMT1/3A遺伝子をノックアウトした所、in vitroにおいて細胞増殖能が有意に低下する事が明らかになった。さらに、in vivoにて検証した所、腫瘍の増殖・転移を明らかに抑制する事を見出した。また、神経内分泌分化を引き起こす過程においてDNAメチル化が関与するかどうかを検討した。神経内分泌マーカーの発現がDNMT遺伝子のノックアウトにより低下し、さらに過剰発現によるレスキュー実験によってそれらの発現が回復する事を見出した。次に、DNMT 阻害剤を用いてNEPCにおける抗腫瘍効果を検討した所、有意な腫瘍増殖抑制効果が認められた。また、RB1遺伝子の欠失が神経内分泌分化の重要な遺伝子変異である点に着目し、CRPC細胞株を用いてRB1欠失モデルを作成した。RB1欠失はコントロール細胞と比較し、DNMT遺伝子の発現上昇とDNMT阻害剤に対する感受性の増加を認めた。
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