研究課題/領域番号 |
23K19523
|
研究機関 | 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(機構直轄研究施設) |
研究代表者 |
山崎 匡太郎 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(機構直轄研究施設), 生命創成探究センター, 特任助教 (20981624)
|
研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
|
キーワード | elephant / chromosome engineering / MAC / carcinogenesis / animal model |
研究実績の概要 |
これまでの研究で、ゾウがもつ発癌抑制機構への寄与が示唆されている遺伝子(LIF6, TP53RTG12)が報告されている。それらの遺伝子その制御領域を含むDNA配列を導入することで、マウス(細胞)に発癌耐性能を賦与すること、その発癌抑制機構のメカニズムを解明することが、本研究課題の目的である。 強制発現ではなく、発癌初期のDNAダメージのようなイベントに応じた発現様式を再現することが肝要であるため、マウス人工染色体ベクター(MAC)へゾウの当該領域を搭載したLIF6-MACを作製し、これをチャイニーズハムスターCHO細胞からマウスNIH3T3細胞とマウスES細胞に移入した細胞株をそれぞれ樹立してきた。 NIH3T3(LIF6-MAC)とmES(LIF6-MAC)のそれぞれについて、DNAダメージ(4種類の方法)に対するLIF6の遺伝子発現を、RT-qPCRによって調べた。しかし、ゾウ細胞でのLIF6遺伝子発現に比較して数倍程度発現が低い、または遺伝子発現が誘導されていない結果を得た。これは、ゾウLIF6の遺伝子発現制御領域がマウスのシス因子に適合していないことを示唆している。そこで、ゾウLIF6の発現制御領域に変異を導入したLIF6mut-MACを作製した。このように発現制御領域をマウスへ最適化したことで、ゾウLIF6がDNAダメージに応答した発現動態を示すようになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ゾウの遺伝子発現制御領域がマウスの中で機能しない可能性は予め見込んでいたため、比較的早期に、変異を導入したLIF6mut-MACの作製に取り掛かることができていたものの、その分の遅れが発生した。 TP53RTG12遺伝子と制御領域の搭載では、クローニングする領域がパラログ遺伝子(TP53RTG1~19)と類似しており、TP53RTG12を特異的に取得することが困難な状況であった。
|
今後の研究の推進方策 |
ゾウTP53RTg12の搭載については、配列取得が難しい点だけでなく、発現制御領域が機能するかどうかや、タンパクとしての機能がマウスに適合するかなどの懸念があった。このことから、PlanBとしてマウスのTrp53をベースとしたTrp53rtg12を作製することも計画していたため、今後はそちらに移行する。 マウスNIH3T3はtransformation assayに頻用される細胞株であるため、LIF6, Trp53rtg12を搭載したMACを保持させることで、マウス細胞レベルでの発癌耐性能を十分に担保しながら計画を進める予定である。
|