研究課題/領域番号 |
23K19530
|
研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
北村 直也 富山大学, 附属病院, 診療助手 (80978560)
|
研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
|
キーワード | メカニカルストレス / 肺がんモデル / バイオリアクター / 脱細胞 / 再細胞 |
研究実績の概要 |
我々は小型臓器の正確な血管内灌流,およびチャンバー内への圧力刺激を同時に行い,それらのデータをリアルタイムで取得できる新たな機器(TOKAI HIT; 定圧送液ユニットBPU,圧力刺激ユニットCPU,以下バイオリアクター)を導入し,実験を開始した。第1段階として,バイオリアクターの条件設定と安定化,病理所見に基づく再細胞化の安定化を中心に実験を行ってきた。新たなバイオリアクターでは,これまでのバイオリアクターと構造が大きく異なるため,脱細胞化した肺の最適なカニュレーション方法を確立することから着手した。その結果,安定した灌流が可能になった一方で,チャンバー内空気圧刺激(つまりチャンバー内に陽陰圧を生み出し,肺の擬似的な呼吸運動を生み出す)は個々のラット肺の状態などに左右され,一定の空気圧刺激を生み出すのに不安定な要素があることを見出した。この不安定性の改善により,一定期間の安定的な灌流と空気圧刺激を可能にし,血管内圧とチャンバー内空気圧データ採取に成功した。具体的には,血管内は7-21ml/minの安定灌流,空気圧は-5-0mmHgの間の陰圧状況確立を得た。ここから得られたデータは,それぞれ血管壁への剪断応力や肺への圧ストレスを客観的に評価することに寄与すると考えられる。また,Yale大学Bioengineering教室のプロトコールを参考に,新たなバイオリアクターでの再細胞化の最適化について検証を進めた。投与細胞数や詳細なプロトコール調整の結果,当初より広範囲への細胞接着が可能になった(病理所見で最大80-90%/視野程度)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでは,新たなバイオリアクターによる肺の最適なカニュレーション,安定的な空気圧刺激,良好な再細胞化などの検証に時間を要した。しかし,メカニカルストレス(ここでは特に圧ストレス)を与える肺と与えない肺の2つを同時に灌流する手法を確立し,また癌細胞投与モデルの構築にも成功した。よって研究計画書の第1段階の小型肺の創出から第2段階の病理学的評価までは進行できていると考え,おおむね順調と評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後はメカニカルストレス(呼吸運動による圧ストレス)の有無による比較検討を3例行い(2匹ずつ×3例=合計6肺),これらを病理学的所見や遺伝子発現,アポトーシスなどの観点から解析を進める。また今春より新たな工学部の大学院生を迎えることができたため,医工連携をさらに加速できる環境を整えていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本実験に向けてさらなるラット購入費用を要する見込みであり,学会発表(海外含む)や論文投稿費用等にも予算のさらなる計上が見込まれると判断し,次年度使用額が生じる結果となりました。
|