研究課題/領域番号 |
23K19538
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
井筒 瑠奈 鳥取大学, 医学部, 助教 (50983102)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | 肝微小環境 / エクソソーム / 肝転移 |
研究実績の概要 |
肝転移はがん死に直結する喫緊の課題であるが、その機構は十分に解明されていない。本研究は、肝類洞周囲の構成細胞に着目してがん細胞由来AMIGO2包含エクソソームによる肝実質内への浸潤機構を明らかにし、AMIGO2による肝転移の全容解明を目的とする。原発腫瘍から遊離、脈管内浸潤を果たしたがん細胞の血行性肝転移には、まず肝類洞内皮細胞との接着後に血管外に溢出し、その後に肝実質内へ遊走し、生着・増殖するという連続した過程を経る。申請者は、肝転移ドライバー遺伝子である amphoterin-induced gene and open reading frame2(AMIGO2)が、がん細胞由来のエクソソームに包含され、肝類洞内皮へ作用することでがん細胞との接着を促進することを明らかにしてきた。しかしながら、がん細胞による肝転移巣形成には内皮細胞との接着のみでは不十分であり、がん細胞が肝実質側へ誘引され浸潤することが必要となる。 本研究は、肝内皮細胞以外の肝類洞周囲の微小環境を構成する細胞に焦点を当て、肝転移促進におけるがん細胞由来AMIGO2包含エクソソームの役割を検討するため、本年度は肝星細胞を対象とした。がん細胞由来AMIGO2包含エクソソームを添加した肝星細胞の培養上清を回収しケモカインアレイキットを用いて活性化肝星細胞上清中に含まれるがん細胞遊走因子を網羅的に解析することにより3種のがん細胞遊走因子の産生促進を見出した。また、がん細胞遊走アッセイにより同定した候補因子に対する中和抗体の添加によってがん細胞の遊走阻害効果をin vitro系にて確認し、これらの遊走因子が単独あるいは協同的に作用してがん細胞の肝実質への誘引に関与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は肝星細胞を対象とし、肝転移促進におけるがん細胞由来AMIGO2包含エクソソームの役割を検討した。その成果として、がん細胞由来AMIGO2包含エクソソームを添加し活性化した肝星細胞では、複数の炎症性サイトカインの分泌が促進していることが示され、これらが、がん細胞遊走に寄与する候補因子として挙げられることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、肝微小環境を構成する肝星細胞以外の正常細胞(肝細胞およびクッパー細胞)に対するがん細胞由来AMIGO2包含エクソソームの役割をin vitroで検討するとともに、動物実験およびヒト臨床材料にてがん細胞遊走促進因子を最終決定する。
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