研究課題/領域番号 |
23K19598
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
小神 昌寛 順天堂大学, 医学部, 助教 (90985756)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | 皮膚筋炎 / 抗MDA5抗体 / 間質性肺疾患 |
研究実績の概要 |
抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎は急速進行性間質性肺疾患を高率に合併する予後不良の疾患である。本疾患の病態生理は明らかになっておらず、モデルマウスを作成することで病態生理の解明、治療法開発の礎を築くことが本研究の目的である。B6J、DBA/1Jマウスを用い、抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎患者の血漿より精製したIgGを尾静脈より直接注射し、2週間後の肺病理を評価したところ、一部のマウスで間質性肺炎が確認できたため、抗MDA5抗体自体による肺障害の病原性が示唆された。また、抗体を投与したマウスと健常人のIgGをコントロールとして投与したマウスの脾細胞も回収し、フローサイトメトリーでリンパ球、単球といった免疫細胞の評価を行ったが有意な差を認めなかった。併せてマウスの血清を回収し皮膚筋炎活動性の指標となりうるフェリチン、炎症性サイトカインとしてIP-10とIL-6、間質性肺炎評価の指標となりうるKL-6をELISAで測定したが、肺炎の有無でKL-6やIP-10の有意差は認めず、フェリチンは抗MDA5抗体投与群よりもコントロール群の方が高値であった。なお、IL-6はいずれも検出感度以下であった。マウスの間質性肺炎発症を安定して作製できることを目的とし、ブースターとしてToll like receptor(TLR)4アゴニストであるリポ多糖、TLR7/8アゴニストであるR848、TLR9のアゴニストであるCpG ODN、TLR3のアゴニストであるpoly(I:C)を使用し、間質性肺炎の発症率やサイトカインの変化をブースターの有無で比較をしたが、投与の有無で間質性肺炎の発症率やサイトカインはブースターの投与下で抗体投与の有無で有意な差は認めなかった。本年度の研究では抗MDA5抗体自体がどのような機序で肺炎を誘導し、TLRを介した炎症誘発性ネットワークとの関連を見出すことはできなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度実施した研究結果より、モデルマウス作製のプロトコルがある程度確立でき、このモデルマウスを用いて、まだ評価をしていない肺由来の細胞の解析を行うこと、さらには当講座で保有している抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎患者由来の血清や末梢血単核細胞より抽出したRNAを用いて病態発症に関わる抗体価やサイトカインの推移、遺伝子発現などの評価を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
一部のB6J、DBA/1Jマウスで抗体投与後の間質性肺炎誘導が確認できたものの、免疫賦活作用を期待し、ブースターとしてLPS、R848、CpG ODN、poly(I:C)を使用したが、ブースター自体による血清サイトカインの上昇は確認できたものの間質性肺炎の発症率には変化は認めなかったため、モデルマウス作製のプロトコルとしてブースターは用いない方針とした。また、マウスの脾細胞のフローサイトメトリーによる解析でも、抗体投与による免疫細胞の差は確認されなかった。今後は、マウスを用いたin vivoでの研究に加え、in vitroとして、回収したマウスの脾細胞、ヒト由来単球系白血病細胞(THP-1)、健常人や患者の末梢血単核球を用いて、抗MDA5抗体陽性患者由来のIgGと共培養し、培養上清のサイトカイン、培養細胞の遺伝子発現として、IFIH1(MDA5)、IFNB1をreal time PCRで評価する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由はモデルマウスの間質性肺炎発症率が安定せず、十分なモデルマウス数での評価ができなかったため。 使用計画としてはマウスや抗体、PCRの試薬等の購入を予定している。
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