研究課題
臓器不全に対して、移植を除けば根本的な治療法は存在せず、対症療法に頼るしかない現状がある。Oct4、Sox2、Klf4、c-Myc(リプログラミング因子、OSKM)を用いた人工多能性幹細胞(iPS 細胞)の誘導方法が発見されて以来、生体外で準備した細胞や組織を生体内に移植する治療法が模索されている。しかし細胞培養や組織作製には費用や時間といったコストがかかり、移植後に生着するかといった問題もある。一方、リプログラミングの過程において、老化に伴う細胞の変化、例えばテロメアの短縮やミトコンドリア機能の低下が消失することに着目し、生体内でリプログラミング刺激を加えること(生体内リプログラミング)で、老化の影響を逆転させる試みが行われている。この手法は理論上有望だが、腫瘍が生じるリスクがあるという重大な問題が指摘されている。この問題を克服するために、先行研究では遺伝子改変マウスを使用して生体内リプログラミングを短期間実施することで、腫瘍化リスクを軽減し、臓器再生や早老症マウスの寿命延伸に成功している。本研究では臨床につなげることを念頭に、アデノ随伴ウイルス(AAV)を使用して、生体内でリプログラミングが可能なシステムを構築することを目指している。この新しいシステムを構築するために、現在 AAV の作製に必要なプラスミドの設計を進めており、in vitro での発現を確認している。さらに、これらのプラスミドを改良し、最適な条件を見つけるための実験を続けている。このシステムを用いて、様々な病態モデルマウスでその効果を調べることにより、生体内リプログラミングの有効性と安全性を検証し、将来的には臓器不全の根本的な治療法としての実用化を目指している。
3: やや遅れている
大量の AAV 作製に必要な大型の超遠心機が兵庫医科大学にないため、小型のものを用いての対応など検討しているため。
リプログラミングをより効率的に行える AAV を作製し、様々な病態モデルマウスでの効果を調べていく。
本研究費が支給されたのが年度途中であることや、大量の AAV 作製が難しかったことから、予定していた予算の全額を本年度中に使用できず、次年度に繰り越すことになった。2024年度においては、繰り越した費用も用いて大量の AAV 作製を行い、計画通りに進めていきたい。
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件)
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