研究課題/領域番号 |
23K19604
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
井出 佳奈 千葉大学, 医学部附属病院, 医員 (50979573)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | 慢性腎臓病 / 腎臓間質線維化 / 転写因子Tcf21 |
研究実績の概要 |
申請者は、間質細胞線維化時に発現上昇する転写因子Tcf21に着目し、Tcf21の機能解析を行うことが慢性腎臓病における間質線維化に対する新規治療標的につながると考えた。本申請研究の目的は腎臓間質特異的Tcf21欠損マウスを作成し、その解析を行うことで転写因子Tcf21が線維化誘導もしくは抑制にどのように寄与するかを明らかにするである。初年度では下記の成果を得ている。 研究計画1:腎線維化モデルにおいて間質細胞でのTcf21発現が誘導されることを再確認する目的で、片側腎動脈虚血再灌流術(unilateral ischemia reperfusion injury: uIRI)モデルでのTcf21発現を確認した。その結果、Tcf21発現がuIRIにより誘導され、虚血時間により障害強度を増強することでTcf21発現が増加することが再確認された。またin situ hybridization法により間質細胞においてTcf21が発現することを確認した。続いて成熟個体において腎臓間質細胞特異的にTcf21を欠損するマウスの作成を試みた。腎臓間質細胞で発現するPdgfrβをプロモーターとした薬剤(タモキシフェン)誘導性のCreマウス(PdgfrβERCreマウス)に対し、臓器発生の終了した3週齢以降に薬剤を投与しTcf21を欠損させた。まず薬剤投与回数によるTcf21欠損効率について条件検討を行い、タモキシフェン3回投与後28日目で腎臓を摘出し、qPCR法によりTcf21発現が有意に低下することが確認された。さらに、これらマウス(PDGFRβERCre; Tcf21 f/f)の表現型解析を行ったところ、定常状態では腎間質線維化に差を認めないことが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記のように腎臓間質特異的Tcf21欠損マウスの作成が完了しており、マウスの交配も進んでいる。また上述のようにTcf21が腎線維化モデルにおいて発現上昇すること、さらに腎臓間質特異的Tcf21欠損マウスは定常状態においては腎間質線維化に差を認めないことが明らかとなり、研究計画1 はほぼ完了している。今後研究計画2として上記マウスの各腎障害モデルにおける表現型解析を行っていく予定であるが、すでに十分なマウス個体数の確保が可能となっている。
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今後の研究の推進方策 |
上記腎臓間質特異的Tcf21欠損マウスに対して各腎障害モデル(uIRI、UUO、アリストロキア酸誘導性尿細管障害)により間質線維化にどのような影響が生じるかについて検討を行う予定である。間質線維化の評価としてaSMA, COL1A1などの線維化マーカーの免疫染色及び定量qPCR法、Masson-Trichrome染色による評価を行う。さらに腎臓間質細胞特異的Tcf21欠損及び過剰発現マウス腎臓に対して片側虚血再還流モデルを用いて腎障害を誘導し、scRNA-seqを用いた遺伝子の網羅的解析を行う。従来のscRNA-seqを用いた検討では、間質細胞は細胞集団が少ないため、Magnetic Cell separation Strategies (MACS) もしくはFACSを用いることで間質細胞の単離を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初腎臓間質細胞特異的Tcf21欠損マウスの定常状態でのscRNA-seqを用いた遺伝子の網羅的解析を行うことを検討していたが、定常状態では明らかな表現型がみられないことが確認されたため実施を見送った。その費用を用いて次年度には腎臓間質細胞特異的Tcf21欠損マウスの腎障害モデルにおけるscRNA-seqを行う予定であり、その際の試薬ならびにシークエンス費用として使用することを計画している。
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