研究課題/領域番号 |
23K19608
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
原 悠 東京医科歯科大学, 東京医科歯科大学病院, 特任助教 (10981772)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | LRBA欠損症 / 原発性免疫不全症候群 / 尿濃縮応答 |
研究実績の概要 |
ヒトLRBA遺伝子の様々なミスセンス変異によってLRBAタンパクの発現量が著しく低下し、免疫不全や多様な自己免疫症状を呈するLRBA欠損症となる。LRBA欠損症の原因となるミスセンス変異のひとつであるLRBA R1445Q変異をHEK 293T細胞で一過性発現をするとタンパク発現量が野生型LRBAに比べて著しく低下することから、この系を用いてLRBAのタンパク発現量を回復させる薬剤のスクリーニングを行った。現時点において、既存薬Xが変異LRBAの発現量を回復させる最も有望な薬剤であると結論付けた。さらに、LRBA R1445Q変異の病態モデルとなるLrba R1442Qノックインマウスを作出した。F0からF1の作出に難渋したため、胚操作を実施することでF1を得て、これらのマウスをmatingすることでF2マウスまで得ている。LRBAは免疫機能だけではなく腎臓においてバゾプレシンに応答する尿濃縮に必須の役割を持つことから、Lrbaノックアウトマウスでは脱水状態においても多尿となる。Lrba R1442Q ノックインマウスにおける尿濃縮力を解析したところ、飲水制限試験によってWTマウスと比較して水喪失による著名な体重の減少を認め、脱水状態においても尿の濃縮力が低下していた。さらに、バゾプレシン負荷試験を行ったところ、バゾプレシン応答による尿濃縮が障害されていた。これはLrba ノックアウトマウスと同様の表現型であることから、腎臓においてLRBAタンパクの欠損が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
LRBA発現回復作用を持つ薬剤スクリーニングはすでに終了している。発見された既存薬Xは人において臨床応用されていることから理想的な化合物である。またマウスは様々な工夫を行っても自然交配によってLrba R1442QノックインマウスのF0からF1マウスが得られなかった。そこで胚操作においてF1を得ることで、スケジュールの遅れを回避し腎臓フェノタイプの解析に着手できている。
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今後の研究の推進方策 |
Lrba R1442Qノックインマウスが解析可能な十分な数が得られたため、臓器におけるLRBAタンパク発現量やmRNAを確認する。さらにin vitroでスクリーニングした化合物がin vivoにおいてもLRBA発現量回復作用をもつか確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
F1のノックインマウスの誕生まで時間を要したことから、初年度において想定よりもマウス飼養代及び解析費用がかからなかったため次年度使用額が生じた。2024年度はノックインマウス数の増加と解析費用の増加が見込まれ、これらに使用する予定である。
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