研究課題
住血吸虫症は、WHOが提唱する顧みられない熱帯病(NTDs)の1つであり、発展途上国を中心に2億人を超える罹患者が存在する。特効薬としてプラジカンテルが用いられるようになったが、ヒト以外の哺乳類も終宿主(人獣共通感染症)とすることから防圧が非常に困難な疾患である。本研究では住血吸虫(Schistosoma mansoni)抗原を強制発現させた組換えワクシニアウイルスLC16m8株を樹立し、高い感染制御能を有する抗原をスクリーニング可能な系の構築を目指した。高度弱毒化天然痘ワクチンLC16m8株のゲノムを保持するbacterial artificial chromosome(m8-BAC)システムを用いて組換えウイルスを作製した。m8-BACに挿入する抗原遺伝子は既報(Al-Naseri et al., 2021)を参考に、住血吸虫の代謝や免疫回避機構に関わるSm-TSP-2、Sm14、Sm-p80等を選定した。住血吸虫からRNAを抽出後、目的候補遺伝子のcDNAの調製に成功した。さらに、タンパク質精製を可能にするHisタグ配列を付加したサブクローニングにも成功した。今後は、これらの目的候補遺伝子を用いて組換えウイルスの作製を試みる。
3: やや遅れている
組換えワクシニアウイルスの作製にあたり、学内外の各種承認を必要とし、審査に時間を要したため。
次年度(令和6年度)は住血吸虫に対する抗原を強制発現させた組換えウイルス(m8-Sm)を調製し、目的抗原タンパク質の発現確認を行う。更に、動物実験により抗体産生能の評価を行うため、マウスへのm8-Sm接種を実施する。マウス血清を回収することで(接種前、1回・2回接種後)、抗体価を分析する。また、液性免疫および細胞性免疫に対する誘導能を各種サイトカインELISA解析やフローサイトメトリーによる表面抗原発現解析、遺伝子発現解析を用いて多角的に評価する。
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