研究課題/領域番号 |
23K19671
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
吉村 明洋 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (70981992)
|
研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
|
キーワード | 腎癌 / 免疫療法 / Regnase-1 |
研究実績の概要 |
① 腎がん腫瘍組織におけるRegnase-1局在性の検討 腎がん腫瘍組織内におけるRegnase-1発現はがんの進行に伴い亢進するが、腫瘍組織内のReg1局在性は不明であった。我々は、研究協力者である京都大学の植畑准教授より供与されたRegnase-1抗体を用いて、腫瘍組織の免疫染色を行った。染色の結果、Regnase-1は腎癌腫瘍細胞に発現していることが分かった。このことから、腫瘍細胞のRegnase-1が腫瘍微小環境に何らかの影響を及ぼすことが示唆された。また、in houseのRNAシーケンス結果を解析し、M1症例のRegnase-1の発現が、M0症例よりも有意に高いことが分かった。 ② 腎がん細胞株を用いたRegnase-1標的領域の検討 腎がん細胞株において、siRNAを用いてRegnase-1ノックダウン細胞を作成した。ノックダウン細胞のRNA発現を網羅的に解析し、Regnase-1の標的候補遺伝子を抽出した。これらの遺伝子の中には、免疫に関連するケモカインや、細胞増殖に関連するものが含まれていた。 ③ 腎がん腫瘍組織における3’UTR変異解析 がん細胞ではReg1自身の3’UTR領域変異によりReg1やReg1標的遺伝子の発現量が変化し得る。そのため腫瘍組織に対する全エクソン解析(WES)とRNAシーケンスを同一患者で行い、3’UTR変異がある遺伝子の発現がRNAレベルで変化しているかを解析した。その結果、3’UTR領域変異によりmRNA量が変化している遺伝子を30個抽出した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Regnase-1の腫瘍微小環境における役割を理解するにあたって、当初の予定では腫瘍浸潤リンパ球の解析も行う予定であった。そちらに関しては未だ進展していないが、腫瘍細胞に関するRegnase-1の働きについては予定よりも進展している。よって、全体としてはおおむね順調に進展していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
① 腎がん細胞株を用いたRegnase-1標的領域の検討:抽出したRegnase-1の標的候補遺伝子の中で、どの遺伝子が腫瘍微小環境に大きな影響を与えているかを、検討する予定である。 ② 腎がん腫瘍組織における3’UTR変異解析:がん細胞ではReg1自身の3’UTR領域変異によりReg1やReg1標的遺伝子の発現量が変化し得る。そのため腫瘍組織に対する全エクソン解析(WES)とRNAシーケンスを同一患者で行い、3’UTR変異がある遺伝子の発現がRNAレベルで変化しているかを解析した。今後は、それらの遺伝子が標的遺伝子か否かを、標的遺伝子の3’UTRをルシフェラーゼ遺伝子下流に挿入したコンストラクトを用いて検討する予定である。 ③ 腫瘍組織浸潤リンパ球(Tumor infiltrated lymphocyte, TIL)の表現型解析:腎がん腫瘍組織検体より腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を抽出し、フローサイトメトリーにてPD-1、TIM3、LAG3などの疲弊化マーカーに加えReg1の発現解析を行う。すでに疲弊化マーカーが過剰発現したTILにおいてReg1の発現を確認し、両者の関連性や独立性を検討する。 ④ Reg1高発現T細胞におけるT細胞受容体(TCR)レパトア解析:我々はこれまでにがん抗原特異的T細胞の表現型解析としてTCRレパトア解析を行ってきた(Kato T. et al. Oncotarget. 2018)。Reg1高発現T細胞をフローサイトメトリーにてソーティング後にTCRレパトア解析し、特定のTCRを持ったT細胞が優勢となるか検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため、当初の見込み額と執行金額が異なった。
|