研究実績の概要 |
超高齢社会となった現代において、関節リウマチや歯周病などの病的骨吸収を伴う疾患が問題となっている。これらの疾患はTNF-αやRANKLなどの炎症性サイトカインの分泌とそれに伴う骨吸収が関与していると考えられている。矯正治療と炎症性サイトカインは密接な関係にある。申請者らグループの研究では歯科矯正治療中の歯の移動においてもTNF-αが発現し破骨細胞形成を促進させ(J Dent Res, 2008)、RANKLの発現を増加させることで相乗的に破骨細胞形成を誘導することが明らかになっている(J Dent Sci, 2021)。 また、申請者の筆頭論文においてTNF-αを誘導すると矯正学的歯の移動が促進することを明らかにしている(Int J Mol Sci, 2022)。近年、破骨細胞を含む造血系細胞に発現する膜貫通型糖タンパク質であるSemaphorin4D(Sema4D)が、炎症性サイトカインであるTNF-αやIL-6を誘導するとともに、CD72受容体に結合し骨形成を抑制することが明らかとなった。そして、抗Sema4D抗体の投与により骨形成が促進されるとともに、破骨細胞形成が抑制されることもわかった。しかし、現在に至るまでSema4DとTNF-αによる破骨細胞形成の関係については報告が少ない。本研究では、TNF-αに誘導される破骨細胞形成に対するSema4Dの影響およびそのメカニズムの解明、さらに抗Sema4D抗体の破骨細胞形成および矯正学的歯の移動への影響を検討する。まず、マウスの頭蓋部にTNF-αを投与し、破骨細胞が誘導するのを確認した。頭蓋部を採取して、トータルRNAを採取し、リアルタイムPCRにてSema4Dの発現を解析するところまで終了した。
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