研究課題/領域番号 |
23K19693
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
福場 真美 徳島大学, 病院, 助教 (40980165)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | 口腔乾燥症 |
研究実績の概要 |
まず、唾液腺に浸潤する脂肪細胞周囲に免疫細胞が存在するか検討した。シェーグレン症候群患者の口唇腺生検材料および対照群の耳下腺材料において、脂肪細胞周囲にマクロファージが存在することを組織免疫染色で確認した。 続いて、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞株であるUE7T-13を用い、脂肪細胞へ分化誘導実験を行った。脂肪細胞への分化はOil Red O染色で確認した。 また、公共データベースを用い自己免疫疾患における唾液腺での遺伝子発現の網羅的解析を実施した。1型糖尿病を自然発症するモデルマウスであるNOD (Non-Obese Diabetic)マウスでは、唾液腺炎を高頻度に伴うことが知られており、GEO (Gene Expression Omnibus)からNODマウス唾液腺のDNAマイクロアレイ実験データを利用した。雌マウスの1型糖尿病発症群(21週齢)と非発症群(21週齢、6週齢)を比較し、変動遺伝子はMetascapeを用いてエンリッチメント解析を実施した。1型糖尿病発症群の唾液腺ではアミラーゼやチキナーゼといった酵素などの遺伝子発現が亢進し、消化に関連するパスウェイの変動が示唆された。一方、非発症群ではカリクレインやレニンなど血圧調整に関わる遺伝子の発現亢進が見られ、レニン-アンジオテンシン系のパスウェイに変動が生じている可能性が明らかになった。 さらに、GEOからヒトシェーグレン症候群患者の唾液腺でのRNAシークエンス解析のデータを若年者患者と中高年者患者で比較した。IPAを用いてNODマウス1型糖尿病非発症群(6週齢)と発症群(21週齢)の差と同時解析すると、高齢群の唾液腺ではTNFやIFN-γ、IL-1といった炎症性サイトカインが誘導されていることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では患者検体から間葉系幹細胞を分化誘導することを目指していたが、細胞数が少なく困難であった。そのため間葉系幹細胞株を用いて脂肪細胞への分化誘導実験を行っているが、条件の検討に時間がかかっているため。
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今後の研究の推進方策 |
唾液腺の脂肪細胞周囲のマクロファージの種類や機能を検討する。マクロファージの役割が明らかになれば、関連する炎症性サイトカインをヒトシェーグレン症候群患者の唾液を用いて検証する。また、UE7T-13を脂肪細胞へ分化誘導し、未分化の状態を対照群として炎症性サイトカインの発現を検討予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験に必要な試薬等を適宜購入したが、所属研究室で既に保有している物品も利用したため次年度使用額が生じた。次年度は実験の進み具合に応じて動物実験や学会発表なども積極的に実施したいと検討しており、翌年度分として請求した研究費と合わせて物品費や旅費として使用を計画する。
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