研究課題
糖尿病は歯周組織の創傷治癒遅延を引き起こし、歯周炎の悪化や治療抵抗性の原因となる。歯周炎により歯周組織が大きく喪失すると高度な歯周組織再生療法が必要となるが、糖尿病患者における歯周組織再生療法でコンセンサスが得られているものは未だ報告がない。申請者はこれまでに線状高分子に環状分子が複数貫通した超分子ポリロタキサン(PRX)を基盤とした細胞接着足場が、環状分子の動的特性(分子可動性)により酸化ストレスに対する細胞の応答を軽減させる可能性を見出した。本研究では2型糖尿病モデルラット由来細胞を使用したin vitro実験及び、同モデルラット口腔内へのPRXを足場として応用する歯周組織再生のin vivo実験を通して、PRXの分子可動性によって糖尿病状態における酸化ストレスに抵抗する新規歯周組織再生療法の構築を目指す。現在までに予備実験として、ラット口腔内に歯周組織再生療法を行い、創傷治癒に関わる因子を調査したところ、メカノセンサーであるTRPV1を介して血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の高発現が認められた。また創傷治癒遅延に対する影響を今後in vitro系で評価していくために、糖尿病モデルラットから歯肉線維芽細胞を採取し培養条件を検討し、最適化をはかった。またコントロールラットからも歯肉線維芽細胞を併せて採取・培養し糖尿病群とコントロール群とでのベースラインでの差異を分析している。
2: おおむね順調に進展している
In vivoでの予備実験において創傷治癒に関わる経路への影響が認められ、In vitro系で創傷治癒を評価するため歯肉線維芽細胞を採取し培養条件の検討を行った。
創傷治癒について、ポリロタキサン表面上で糖尿病群の歯肉線維芽細胞を培養し、糖尿病状態における酸化ストレスの反応や、炎症性サイトカインの発現、遊走能の変化など創傷治癒にかかわる因子について調査する。併せて骨再生について評価するために糖尿病モデルラットから骨髄由来間葉系幹細胞を採取し、ポリロタキサン表面上での培養条件を検討していく。
次年度以降の実験において、In vivo実験に必要な物品購入に使用する予定である。
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Journal of Periodontology
巻: - ページ: -
10.1002/JPER.23-0458
Photodiagnosis and Photodynamic Therapy
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