研究課題/領域番号 |
23K19713
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
長澤 祐季 東京医科歯科大学, 東京医科歯科大学病院, 医員 (00981755)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | とろみ調整食品 / 食後血糖 / 嚥下障害 |
研究実績の概要 |
とろみ調整食品は、嚥下機能が低下した高齢者や嚥下障害患者の誤嚥性肺炎の予防や確実な水分摂取を可能とし、適切に用いることで臨床的に大変有用である。とろみ調整食品に添加されているキサンタンガム(増粘多糖類、水溶性食物繊維)は、脂質吸収を抑制させる効果や血糖値上昇を抑制させる効果などが、ヒトや動物を対象とした研究成果として報告されている[山本ら,2001., Osilesi O, 2013.]。一方で、とろみ調整食品を食事とともに摂取した際にどのような影響を及ぼすかはこれまで十分に検討されてきていなかった。既にとろみ調整食品の長期摂取が食後血糖の上昇を 抑制すること、回腸における糖尿病治療薬の標的になっている Glp1 を含む糖・脂質代 謝関連遺伝子の発現量の変化、腸内細菌叢の変化が起きることを動物モデルで明らかにした。この結果から、血糖抑制効果の要因は物理化学的性質(粘性)、消化管ホルモン、腸内細菌など複数の要因に起因する可能性が示唆された。しかしながら、動物モデルで確認されたキサンタンガム系とろみ調整食品の血糖上昇抑制効果のメカニズムについて、 とろみ調整食品の粘性、消化管ホルモン、腸内細菌叢の変化等、複数の要因が考えられるが、血糖上昇抑制の 直接的要因の詳細は明らかでない。また、ヒトへの臨床応用が可能であるかはさらなる検討が必要である。 そこで本研究は、ラットを対象としてこのメカニズムを分子生物学的観点か ら明らかにすること、ヒトを対象とした耐糖能試験で臨床的な効果を評価し、新しいとろみ調整食品を開発に向けた基礎的データを収集することを目的とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
動物モデルで確認されたキサンタンガム系とろみ調整食品の血糖上昇抑制効果の直接的要因の詳細を明らかにすることを目的とした基礎的検討について、東京医科歯科大学動物実験委員会より承認を得て現在データを採取を行なっている。また、臨床研究についても倫理書類を作成し現在審査中である。 得られたデータの一部は国際学会、国内学会にてそれぞれ発表を行なった。
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今後の研究の推進方策 |
8週齢のSprague-Dawleyラットを1週間順化させたのち、8時間絶食(痛みカテゴリーB)させ、8%とろみ水摂取 群(Th)(生理食塩水に粉末状のとろみ調整食品(80mg/kg)を懸濁して調整、体重10gあたり0.1mLの経口投 与)と生理食塩( 体重10gあたり0.1mLの経口投与量)を摂取するコントロール群(Co)の2群に各7匹ずつに分け る。グルコース負荷試験を行い、投与前30分から120分後まで30分おきに血糖値を尾静脈より2μL採血し測定して上昇抑制効果を検証するとともに、実験終了後安楽死させたラットから消化管組織(胃・ 十二指腸・空腸・回腸)を回収し、単発投与によっても長期摂取時と同様に回腸消化管ホルモン遺伝子発現量に 差が見られるか、qPCR解析で検証する。また、ヒトへの臨床応用が可能であるかを検討するためクロスオーバー型無作為化比較試験を実施する。被験者をA群とB群の2群に割り付ける(A群:耐糖能試験前とろみ水介入→耐糖能試験前とろみ水なし介入,B群:耐糖能試験前とろみ水なし介入→耐糖能試験前とろみ水介入)介入前日は,翌日の血液検査が9時15分から開始する場合は21時以降の絶食を指示し、13時15分から開始する場合は25時以降の絶食を指示する。飲水は除外する。1回の血糖測定で採取する血液は2μLとし、メディセーフフィットを使用して血糖測定を行う。経時的に血糖値を測定し、とろみ調整食品が食後血糖を抑制するかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在倫理申請中である臨床研究において使用する使用期限が短い消耗品を含む研究消耗物品の購入を翌年度に持ち越したため。次年度は現在実施している基礎的検討及び今後実施予定の臨床研究のデータ採取に係る研究消耗物品、またこれらの結果についての学会発表のための旅費及び論文校正費、投稿料に使用する予定である。
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