研究課題/領域番号 |
23K19725
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
岸本 有里 北海道医療大学, 歯学部, 助教 (20983513)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | 歯槽骨のリモデリング / Cre-loxpシステム / α-SMA / Gli1 / Tomato蛍光 / バイオ医薬品 / 骨芽細胞分化誘導法 |
研究実績の概要 |
歯科矯正治療で歯を移動させると、牽引側の歯槽骨において骨形成が生じるが、この歯槽骨を形成する骨芽細胞の分化機構は不明である。効果的な治療法の開発には、矯正治療時における歯槽骨のリモデリングのメカニズムを解明することが重要であるが、これに関しては未だ不明な点が多い。歯根膜には組織幹細胞が存在し、これらは歯周組織の恒常性および組織修復において重要な役割を果たす。近年、タモキシフェ ン誘導性Cre-loxpシステムによる細胞系譜解析法により、歯根膜に存在するα-SMAならびにGli1を発現する細胞が、歯槽骨の再生過程において骨芽細胞を含む多種類の細胞へ分化することが報告された。また、再生医療の領域では、バイオ医薬品を用いた骨誘導法が注目されており、安全かつ入手も容易である。そこで、本研究では、α-SMA、Gli1を歯根膜幹細胞のマーカーと位置づけ、両マーカーを赤色のTomato蛍光で標識したマウスからα-SMA、Gli1陽性細胞を分取し、骨芽細胞分化過程における遺伝子発現をreal time PCRで比較する。さらに、骨芽細胞分化促進因子をバイオ医薬品に限定して検索し、より効率的な骨芽細胞分化誘導法の開発を目的とする。組織幹細胞は増殖能が低く、幹細胞性を維持した状態で多量の細胞を得ることが難しい。そこで、細胞の増殖はp53欠損(KO)マウスを使用することで簡便化させる。現在、α-SMA/TomatoマウスとGli1/Tomatoマウスにp53欠損マウスを交配させ、α-SMA/Tomato;p53KOマウスとGli1/Tomato;p53KOマウスの作出を行っている。さらに、これらマウスから歯根膜細胞を採取、培養後にFACSを用い、Tomato蛍光によりα-SMA/Tomato、Gli1/Tomato陽性細胞の単離を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
α-SMA/TomatoマウスとGli1/Tomatoマウスにp53欠損マウスを交配させることにより生まれるα-SMA/Tomato;p53KOマウスとGli1/Tomato;p53KOマウスの数が少ないことに加え、歯根膜幹細胞培養の段階で苦戦している。現在、安定した歯根膜幹細胞の培養方法を模索中である。
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今後の研究の推進方策 |
α-SMA/Tomato;p53KO、Gli1/Tomato;p53KOマウスから採取した歯根膜細胞の培養には使用するマウスの安定した数が必要であると考える。そのため、現在、交配に力をいれ、より多くのα-SMA/Tomato;p53KO、Gli1/Tomato;p53KOマウスが得られるよう努めている。多量の歯根膜細胞が得られるようになれば、FACSを用い、Tomato蛍光によりα-SMA/Tomato、Gli1/Tomato陽性細胞の単離を行う。その後、分化促進因子の候補をバイオ医薬品から選び、その選んだバイオ医薬品に対応する受容体が、分取したα-SMA/Tomato、Gli1/Tomato陽性細胞で発現しているかreal time PCRで確認する。2種の陽性細胞間で発現の差が大きい受容体に対応するバイオ医薬品を同定する。同定したバイオ医薬品を分取したα-SMA/Tomato、Gli1/Tomato陽性細胞に添加し、in vitroで骨芽細胞分化が促進するか評価する。in vivoでα-SMA/Tomato、Gli1/Tomatoマウスに矯正移動を10日間行い、それらから作製した切片で分化促進効果のあるバイオ医薬品の下流因子が発現することを確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の研究の進みが予定よりも遅れているため、それに伴い物品購入等も当初予定していたものより少なくなったため。今後の使用計画としては幹細胞培養に使用する薬品、免疫染色等に使用する消耗品や抗体等の購入を予定している。
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