研究実績の概要 |
本研究課題は高齢者における向精神薬の処方傾向を明らかにし、多剤併用を削減するための介入についての仮説を得ることが目的である。厚生労働省が提供しているレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)の抽出・解析を行い、有害事象に関連した向精神薬処方パターンを明らかにすることを計画している。 まず向精神薬の処方傾向を調べるために、厚生労働省が公表しているNDBデータの集計結果(NDBオープンデータ)を用いて、都道府県ごとのばらつきの評価を行った。その結果として、睡眠薬や抗不安薬は北海道・東北地方で多い傾向があった。また向精神薬処方が少ない要因として認知行動療法などの非薬物療法の普及が原因という仮説があったが、日本では保険診療としての認知行動療法の実施数は非常に限られ、関連性については確認できなかった。 ・Fujisawa M, Takashi N, Ohtera S. Exploring Factors for Regional Differences in Inappropriate Psychotropic Drug Prescribing: Ecological Study Using a Claims Database in Japan. ISPOR Europe 2023,POSTER SESSION, Nov 14 2023, Copenhagen K, Denmark. 次に高齢者における有害事象と関連がありそうな抗うつ薬に着目し、性年齢別の処方傾向を明らかにした。抗うつ薬の作用機序分類(三環系、四環系、SSRI、SNRI、その他)、薬効分類名称(パロキセチンなどその他を除いた計13の薬剤)を分析対象の薬剤とした。これら薬剤の処方数(錠剤・カプセル数)、処方量(mg)、薬剤医療費(米国ドル)を年度別・性年齢別に集計した。その結果として、高齢者で処方が増加している薬剤として、デュロキセチンが特定された。こちらの分析については現在論文執筆を進めている。
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