研究課題/領域番号 |
23K19793
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
黒鳥 偉作 北海道大学, 医学研究院, 助教 (40981478)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | 死別 / 喪の作業 |
研究実績の概要 |
死別は人間にとって避けることのできない最大の喪失体験である。そして、臨終に立ち会うことや葬送儀礼を行うなどの喪の作業は、死別後の悲しみを受け入れていくための大切な過程である。しかし、COVID-19のパンデミックにより、病院の面会制限のため亡くなる瞬間に立ち会うことができない、緊急事態宣言に伴う行動制限のため葬儀を十分に行えないなど、喪の作業が制限される事態が生じた。精神分析の祖であるフロイトは死別の悲しみを受け入れていく一つ一つの営みを喪の作業と呼び、その作業が阻害されることでうつ病が引き起こされる可能性を指摘した。本研究の目的は、パンデミック前後で、配偶者の死別を経験した者と死別を経験していない者の抑うつの変化を比較し、喪の作業が制限された影響を明らかにすることである。 2023年度、喪の作業や死別に関する先行文献をまとめた。高齢者においての死別の経験は抑うつの大きなリスク因子として知られている。うつ病の有病率は5%である一方、配偶者の死別を一年以内に経験した者のうつ病の有病率は22%というシステマティックレビュー報告がある。死別の悲しみをどのように受けとめていくのか、また、死別を経験した人々の抑うつを悪化させないように何ができるのか、超高齢かつ多死社会の日本において解明すべき喫緊の課題である。 2023年度、30万人の高齢者を追跡調査している日本老年学的評価研究の調査データを入手した。本データは、パンデミック前から横断的、縦断的に大規模調査を行なっている。このデータから、パンデミック前後で、配偶者の死別を経験した者の有無による抑うつのスコアや頻度を比較する。喪の作業が抑うつを緩和する重要な要因であることを解明し、多死社会において、遺された者を共に支える重要性を提言する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り日本老年学的評価研究の調査データを入手した。日本老年学的評価研究の研究者と協力し解析に着手している。
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今後の研究の推進方策 |
解析結果をまとめ、学会発表および論文投稿を行なっていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に学会発表予定であったが、解析途中であるため発表できなかった。また、データ整理・分担補助として人件費および謝金を予定していたが、調査途中であるため計上できなかった。 次年度、調査データの整理および解析のための人件費、研究や成果発表の学会参加費および旅費、公表のため論文投稿料を必要とする。
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