研究課題/領域番号 |
23K19795
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
福田 治紀 群馬大学, 大学院医学系研究科, 助教 (00977895)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | 死後冠動脈造影CT検査 / 死後CT画像 |
研究実績の概要 |
本研究は、冠動脈・心筋の自動画像解析により、冠動脈の病変部や冠動脈の灌流域から予測される心筋の虚血部位を推定し、それを基にした病理組織学的検索を行うことで、適確かつ簡便な冠動脈疾患の診断法の開発を目指すものである。 当施設では、当該年度に約15例の死後冠動脈造影CT検査を行い、その画像所見と病理組織学的所見について放射線科医と議論し、症例を蓄積することができた。また、一部の症例では死後MRI検査や遺伝子解析も行っており、多角的な観点から分析を行うことができた。 一方で、研究中にFFR-CT検査に関して一定の問題が明らかになった。特に、蓄積されたデータを用いることができないことや、撮影条件及び造影剤の注入方法に大幅な改善が必要であることが判明し、今後の課題として残された。これらの問題を解決するために、撮影技術や造影剤の改良に向けた研究が必要である。 現在、蓄積された症例について、心機能解析・冠動脈解析機能を用いて、心筋灌流域の解析を行っている。今後は、計算された心筋菅流域と、病理組織学的所見とを比較し、虚血部位にどのような特徴があるかについて具体的に検討していく。次年度は、さらなる症例の蓄積を行っていくとともに、FFR-CTを死後画像に適用するための手法の改善についても検討を行っていく予定である。 前述した各種検査を組み合わせた包括的な冠動脈疾患の新規診断法の開発により、冠動脈疾患診断の精度の向上が期待され、本研究は法医学における死因究明の新たな一手となると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度では、15例の死後冠動脈造影CTを含む複数の診断技術を用いたデータ蓄積が行われており、これらのデータは放射線科医と議論を行うことで有効活用されている。加えて、一部の症例では死後MRIや遺伝子解析も実施され、病変部位の詳細な分析が可能になっている。さらに、蓄積された症例データを利用して心機能解析や冠動脈解析機能を用いた心筋灌流域の解析が進行中である。 しかし、死後のFFR-CT検査に関しては予定していたデータ利用が困難であることが判明し、この部分では遅れが生じている。この問題の解決のため、撮影条件や造影剤の注入方法に改善が必要であると認識されており、これらの技術的課題に対して改善策の検討が進行中である。 研究は多くの目標に対して順調に進展しているが、一部技術的な問題による遅延が見られる。次年度にはこれらの問題を解決し、さらなる症例の蓄積と心筋解析の症例の蓄積及び、死後CTにおけるFFR-CTの適用可能性の有無を検討することで、研究目標の達成を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
以下の観点から、今後の本研究課題を推進していく。これらの推進方策を実施することにより、冠動脈疾患のより正確な診断と治療法の開発につながると期待される。 1. 症例の蓄積: 死後冠動脈造影CTの症例数を増やし、心筋灌流域解析のためのデータを蓄積する。これにより、データの多様性を高め、解析の精度を向上させる。 2. 多角的な解析手法の導入: 死後MRI、マイクロCT、遺伝子解析を更に活用し、放射線科医との議論を行っていく。 3. 冠動脈解析・心機能解析:死後冠動脈造影CTを行った症例の内、冠動脈での狭窄が見つかり心筋梗塞によって死亡した可能性が高い症例について、心機能解析・冠動脈解析といった画像解析を行う。その後、計算された心筋菅流域と、病理組織学的所見とを比較し、虚血部位にどのような特徴があるかについて具体的に検討していく。 4. FFR-CT検査の導入: 死後FFR-CT検査を行うためには、予定していたデータ利用が困難であることが判明した。この問題を解決するため、撮影条件や造影剤の注入方法の見直しと改良を進める。
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