研究実績の概要 |
本研究では①院外心停止患者の搬送先に関しての実態調査②全国の院外心停止患者のドクターヘリの効果的な地域の可視化の2点について明らかにすることを目的としている。今年度は①を中心に研究を行った。 目撃ありの院外心停止は、体外循環を用いた心肺蘇生(ECPR)の適応の可能性があるため、救命センターや循環器内科医が対応可能な病院へ搬送された方が社会復帰率は高いと考えらえるが、ECPRの効果については賛否が分かれている。ECPR開始までのlow-flow Timeが短い方が予後がよい報告は散見されるが、発生場所とECPRが可能な病院との地理的位置関係から病院選定と予後について検討した報告はほとんどないため、調査することとした。 奈良県で2015年から2021年の間に発生した18歳以上の心原性院外心停止症例:1393件のうち、Arc GIS proを用いてECPRが可能な病院に10分以内で搬送できる範囲で発生した症例に限定し、搬送先をECPR可能病院群と他病院群の2群に分けて比較を行った。 対象症例は292件(ECPR可能病院群173例vs他病院群119例)であった。初期波形ショック適応率は 25.4% vs 16.8%(44例vs20例, p=0.086)、覚知から病着までの時間は31.5分 vs 33.7分(p<0.05)、1か月生存率は13.3% vs 5%(23例vs6例,p<0.05)、神経学的予後良好率は7.5% vs 1.7%(13例vs2例, p<0.05)であった。 ECPRが可能な病院に10分以内で搬送できる範囲に限った場合、心原性OHCAはECPR可能病院に搬送された症例に神経学的予後良好例が多い傾向にあった。
|