研究課題/領域番号 |
23K19856
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐藤 佑樹 東北大学, 医学系研究科, 助手 (70978634)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | 熱傷 / 乳酸菌 / 創傷治癒 / CARD9 |
研究実績の概要 |
熱傷は多量の壊死組織や炎症性因子を伴う外傷で、受傷後の過剰な炎症による組織傷害や、過剰な免疫抑制による感染といった免疫系のアンバランスを引き起こす。本研究では、免疫応答のバランスを調整し、創傷治癒促進作用が認められたナノ型乳酸菌による熱傷治癒への影響を明らかにすることを目的とする。 本年度は熱傷マウスモデルの至適条件検討とナノ型乳酸菌投与方法の検討を実施した。熱傷の作成方法は、熱放散による誤差を抑えるため、温度設定および温度維持が可能なはんだごてを用いて60℃~90℃の温度条件で、マウス背部に接触させることで作成した。温度条件の検討の結果、誤差なく皮膚全層におよぶ熱傷が作成でき、尚且つ熱傷創部と正常皮膚との境界が明瞭で肉眼での評価も可能である90℃、10秒間接触の条件に決定した。当初は、熱傷作成直後にナノ型乳酸菌を投与することを検討していたが、創部を覆う壊死組織の存在により局所投与が阻まれ、投与方法の再検討の必要性が考えられた。検討の結果、作成翌日に生じる壊死組織を、臨床に倣い、外科的に壊死組織を除去し、創部局所投与が可能な熱傷モデルを確立した。 ナノ型乳酸菌はマクロファージなどの細胞に発現するC型レクチン受容体により認識され、そのシグナルがCARD9とよばれるアダプター分子を介して伝達されることで、創傷治癒促進に働くことが明らかとなっている。したがって本年度は、熱傷モデルの検討と並行し、熱傷治癒過程におけるC型レクチン受容体やCARD9の機能解析も実施した。その結果、CARD9遺伝子欠損マウスにおける熱傷後のサイトカイン産生が、野生型マウスと比較して有意に変化があり、熱傷治癒過程におけるC型レクチン受容体の何らかの関与の可能性が考えられ、ナノ型乳酸菌投与による熱傷治癒への影響も期待された。 次年度は上記モデルを用い、ナノ型乳酸菌局所投与による熱傷治癒への影響について解析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
温度条件の検討と、壊死組織除去法の確立により、局所投与が可能な熱傷モデルが確立された。また、肉眼創閉鎖率など、解析のアウトカムも確定した。確立した熱傷モデルを用いて、2024年よりナノ型乳酸菌投与実験を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
熱傷マウスモデルの創部局所へナノ型乳酸菌およびvehicleを投与し、肉眼創閉鎖率、病理組織学的解析、創部白血球分画等、計画した項目の解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
東北大学医学系研究科病理プラットフォームへ病理標本作成依頼中。該当年度に依頼だが、一部標本の完成と受け取りが未了のため。
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