研究課題
2023年度は、集中治療領域人工呼吸器装着患者7名とその患者の日勤担当看護師7名を対象に患者-看護師間コミュニケーション場面をビデオ録画した668.0分のデータから、Patient-Intentional-Actionとnon-Patient-Intentional-Actionを抽出し、それぞれの行動の特徴量、使用された身体部位、行動内容、行動の頻度を解析し比較を行なった。抽出された行動は、37のPatient-Intentional-Actionと520のnon-Patient-Intentional-Actionであった。37のPatient-Intentional-Actionのうち、54.1% は上肢を使用した行動であった。また、520のnon-Patient-Intentional-Actionのうち、52.1% が頭と顔を使った行動であった。看護師が認識するPatient-Intentional-Actionの特徴は、上肢を使用する動作が多いことがわかった。また、行動内容として、指文字(指で文字を書く)、ナースコールを探す、ナースコールを押すなどの行動は、Patient-Intentional-Actionでのみ観察された行動内容であった。一方、顔をしかめる、唇を動かす(口唇術)、ジェスチャー、咳などの行動内容は、Patient-Intentional-Actionとnon-Patient-Intentional-Actionの両方で観察された。この結果は、たとえ同じ行動内容であっても、看護師が観察した行動がPatient-Intentional-Actionであるか否かを判断していること示す。しかし、Patient-Intentional-Actionとnon-Patient-Intentional-Actionの両者に行動内容を含んでいることを考えると、看護師は、患者のコミュニケーション行動をPatient-Intentional-Actionとして認識できなかった可能性が考えられる。今後、看護師がPatient-Intentional-Actionを認識しない、もしくは認識できない要因を調査することが必要である。
2: おおむね順調に進展している
録画データへのアノテーションに時間を要することが予想されたため、事前に録画記録へのアノテーションの方法論を検討していた。検討した方法論を使用しアノテーションを実施した事でデータ解析が予定通りに進行した。
本研究課題は、集中治療領域人工呼吸器装着患者のコミュニケーション開始意思を伝えるための合図的行動(以下、Patient-Intentional-Action)を自動的に検出するモニタリングシステムの構築を最終目標に、引き続き、看護師が認識するPatient-Intentional-Action(患者のコミュニケーション開始意思を伝えるための合図的行動)の特徴を明らかにする。2023年度に抽出したPatient-Intentional-Actionとnon-Patient-Intentional-Actionデータを使用し解析を行う。看護師がnon-Patient-Intentional-Actionとしたコミュニケーション行動の中から、Patient-Intentional-Actionとなる得るコミュニケーション行動を抽出し、その行動の特徴量、使用された身体部位、行動内容、行動の頻度を解析する。加えてPatient-Intentional-Action となり得るコミュニケーション行動で、看護師がPatient-Intentional-Action として認知しなかった要因について解析を行う。
次年度使用額が生じた理由は下記の通りである。1. 論文投稿費を計上していたが、現在、リバイスを提出中である。2023年度に計上していた論文投稿費は2024年度に使用予定である。2. データ処理補助のための人件費を計上していたが、適任者がおらず計上額の使用に至らなかった。
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