研究課題/領域番号 |
23K19885
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
吉村 悠成 筑波大学, 体育系, 特任助教 (20982664)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | 奥行き知覚 / 両眼視差 / 輻輳眼球運動 / 心理物理学 |
研究実績の概要 |
3次元空間内の物体の動きを把握する際,奥行きの情報は非常に重要である.奥行きの動きの知覚に影響を及ぼす要因の1つとして,網膜からの情報がある.視対象(視標)が奥行きを動く場合,網膜上に投影される視標の動きは,左右の眼と視標の成す角度である輻輳角の変化として表現される.したがって,奥行きにおいて,実世界上で視標が一定速度で動いていたとしても,網膜上ではその視標は,加速あるいは減速しながら動く.このように奥行き方向を動く視標は,実世界上と網膜上とで動きが異なるが,これらの動きの違いが奥行きの知覚に及ぼす影響は十分に解明されていない.そこで本研究は,実世界上および網膜上の視標の動きが接近する視標の速度知覚に及ぼす影響を解明することを目的とする.これが解明されることで,奥行きの動きの知覚に関する理解が深まり,最終的に,奥行きを動く物体を正確に把握するための,見方の解明に寄与すると考えられる.2023年度は,初めに,視覚刺激や実験課題の作成に着手し,研究目的を達成するために,視標の移動開始位置および終了位置が異なる5種類の視覚刺激を用意した.続いて,心理物理学的な手法である2肢強制選択法を用いて速度知覚を測定し,実験データを取得した.その結果,網膜上の視標の動きは,視標の移動が終了する位置の違いに応じて,速度知覚に異なる影響を与えることが明らかとなり,視標が観察者に近い位置まで接近するほど,速度知覚は,網膜上の動きの影響を強く受けることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に予定した実験におけるデータの取得を完了し,実世界上および網膜上の視標の動きが接近する視標の速度知覚に与える影響について一定の成果を得た.また,この実験結果を国際会議で発表し,データ分析に関する有益な知見を獲得した.
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今後の研究の推進方策 |
接近する視標の速度知覚に影響を与える要因の一つとして,網膜からの情報以外に,視標が迫ってくることに伴い生じる恐れのような感情が挙げられる.したがって,このような感情が接近する視標の速度知覚にどの程度影響を及ぼしているのか,を検証するために,2024年度は,研究対象者の近くから遠ざかる視標を用いて,速度知覚に関する実験を行う予定でいる.この実験の完遂の後に,全ての実験データを整理し,論文の執筆を行い,国際誌に投稿する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に予定していた学会発表を次年度に行うこととしたため,未使用額が生じた.未使用額は,次年度,研究成果報告(国際会議あるいは国内学会)のための旅費として使用する計画である.
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