研究課題/領域番号 |
23K19898
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
平野 航太郎 静岡県立大学, 薬学部, 特任助教 (30980172)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | 骨格筋 / サルコペニア / 機械受容イオンチャネル / 筋衛星細胞 / PIEZO1 / 老化 / カルシウム |
研究実績の概要 |
本研究では、物理的な力を感知する(機械受容)イオンチャネルPIEZO1が、筋衛星細胞の機能に重要な役割を果たす (Hirano et al., Life Science Alliance, 2023) という発見のもと、「加齢に伴う筋衛星細胞の機能低下は、機械受容イオンチャネルの活性と相関する」という仮説実証により、老齢期の筋再生における機械受容機構の意義解明を目指す。これまでに、予備的な実験により、老齢マウスでは機械受容イオンチャネルの発現量が低下していたことから、老化と機械受容イオンチャネルの関連性が示唆された。現在、機械受容イオンチャネル遺伝子欠損老齢マウスを準備中であり、令和6年度はこれらのマウスの性状解析を行なっていく予定である。 主な解析事項としては、以下のことを明らかにする。①老化に伴う骨格筋再生時における筋衛星細胞のイオン動態は明らかになっていないことから、カルシウムまたはマグネシウム動態をそれぞれに特異的に結合する蛍光指示薬を用いて可視化する。②筋衛星細胞の老化をもたらす原因の全容が未だ明らかになっていないことから、機械受容イオンチャネルおよび2価のカチオンに特に着目して、研究を推進する。③機械受容イオンチャネル遺伝子欠損老齢マウスの筋衛星細胞の性状解析を行うことで、幹細胞性や細胞分化能を評価することにより、老化に伴う詳細な分子メカニズム解明を行う。
これらの検証によって、加齢による筋線維再生不良に関与する細胞力覚機構の同定を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該研究者はこれまでの研究により、細胞膜張力を感知する機械受容イオンチャネルPIEZO1が骨格筋の再生能に重要な役割を果たすこと、生体内においてPIEZO1が骨格筋幹細胞の増殖時に機能することにより、筋再生をもたらすことを明らかにした (Hirano et al. Life Science Alliance 2022)。そこで、令和5年度から、成体から老齢マウスにモデルを発展させることで、老化に伴う筋衛星細胞の微小環境の変化がPIEZO1活性にどのような影響を与えるかを検討している。 現在、Piezo1遺伝子改変老齢マウスを作出中であり、本年度これらのマウスの解析を行う予定である。同マウスより単離した筋衛星細胞を用いたプロテオーム解析を行う上での生化学的な実験の検討を行った。 また、筋衛星細胞に発現する他の機械受容機構の役割解明のため、他の機械受容イオンチャネル遺伝子改変マウスの作出が進行中である。 以上、令和5年度は本年度に向けた準備期間と捉え、令和6年度は更なる研究の発展が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、物理的な力を感知する機械受容イオンチャネル群が、老齢期の筋再生における機械受容機構に関与する検証を行う。 【機械受容イオンチャネル遺伝子改変老齢マウスの解析】 令和5年度に準備が進行していた、Piezo1遺伝子改変老齢マウスを用いたプロテオーム解析を行う予定である。令和5年度に得られた、詳細な検討事項を元にPIEZO1と結合する新たな因子を同定を目指す。また、他の機械受容イオンチャネル遺伝子改変老齢マウスの作出・解析を行う。 【老齢骨格筋幹細胞におけるイオン動態の解明】 老化に伴う骨格筋再生時における筋衛星細胞のイオン動態は明らかになっていない。そこで、老齢マウスより筋衛星細胞を単離し、そのカルシウム動態またはマグネシウム動態をそれぞれに特異的に結合する蛍光指示薬を用いて可視化する。
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