研究課題/領域番号 |
23K20026
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研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
西 健斗 創価大学, 理工学部, 助教 (80980771)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | 窒素除去 / 微細藻類 / 硝化菌 / カプセル / 硝化反応 / 微生物固定化 / 省エネルギー |
研究実績の概要 |
省エネルギーな処理法である「微細藻類-硝化菌共存系」による窒素除去処理を高度化するために、微生物カプセル固定化技術を用いて硝化菌をカプセル内部に、微細藻類を外層膜に固定化した「微細藻類-硝化菌共存系カプセル」の開発を行った。本年度は、カプセルの調製法やカプセル膜厚の最適化およびその光照射回分実験を試みた。まず、カプセル材料には、アルギン酸を膜材料として利用し、カプセル調製法には滴下法を採用した。カプセル径は、アルギン酸の架橋時間を変化させることで粒径および膜厚を制御することが可能であるため、5-30分の架橋時間でカプセルを調製し、架橋時間と膜厚の関係を明らかにした。架橋時間15分のとき、すべてのカプセルが均一に球体となり、微細藻類と硝化菌の比率もおよそ2倍となることが確認された。したがって、実験設計の際に最も用いやすい15分を本実験条件における最適な架橋時間とした。これらの結果を踏まえて、上記条件で調製した微細藻類-硝化菌共存系カプセルの光照射回分実験を実施した。光照射装置には、LED白色光源を用いて、光強度200 μmol photons m-2 s-1で12時間/12時間の明暗周期を設けた。実験では、外層膜に固定化された微細藻類が酸素を生成し、内部の硝化菌が曝気なしで硝化反応を進めるか確認するために、pHを6.5-7.5の範囲で調整を行った。実験開始から7日後、カプセルによるアンモニア除去率は80.4%を達成した。実験期間中には、アンモニアの減少だけでなく、亜硝酸および硝酸の生成が確認されたため、本研究では、曝気なしの微細藻類による酸素供給のみで完全硝化を達成することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
微細藻類-硝化菌共存系カプセルの開発のために、カプセル材料や調製法の検討およびカプセル膜厚の最適化を実施した。カプセル材料にはアルギン酸だけでなく様々な高分子材料を用いて調製を試みた。さらにカプセルの調製法として、単ノズルによる滴下法が最も再現性が高いことから採用した。カプセルの光照射回分実験の結果から、アルギン酸カプセルでは実験期間中にカプセル内部に気泡ができ、これにより1割程度のカプセルが浮遊してしまうことが明らかとなった。さらに、アンモニア除去速度が低かったため、カプセルの拡散抵抗が大きかったことが懸念される。今後は長期連続実験前までに、拡散抵抗の小さいカプセル材料や調製法の再検討を行う必要がある。したがって、当初の予定通り、本年度の目標である調製条件の検討は順調に進み、回分実験から得られた課題点を洗い出すことができたため、「おおむね順調に進展」であると結論付けた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の実験を通して、「アンモニア除去速度の低さ」および「カプセル内における気泡の生成」の2点の課題が抽出された。今後は、アンモニア除去速度に影響しやすいゲルマトリックスによる拡散を最小限にするため、拡散抵抗の小さい固定化材料や濃度条件を探索する。また、回分実験中に生成されたカプセル内気泡がなに由来であるか特定することで、気泡生成の抑制やカプセル強度の改善を試みる予定である。また、カプセル調製において、一度に大量のカプセルを調製するには多くの手間が掛かってしまうため、大量調製可能な装置の設計・作製を同時に進める。これらの方策を進めた上で、光照射連続実験を実施する。光条件や用いる人工廃水は回分実験と同様とし、無曝気におけるアンモニア除去性能だけでなくカプセルの耐久性を評価する予定である。最終的には、提案する微細藻類-硝化菌共存系カプセルによる窒素除去プロセスの有用性について明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に購入予定であったポンプ等の物品が、当初の予定より大幅に納期遅延したことで次年度での購入に先送りしたため次年度使用額が生じた。したがって、この生じた次年度使用額は、次年度で連続実験に必要なポンプおよびそのコントローラ等を購入する予定である。
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