研究課題/領域番号 |
19H03695
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
金丸 和正 筑波大学, 医学医療系, 助教 (20792500)
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研究分担者 |
田原 聡子 筑波大学, 生存ダイナミクス研究センター, 講師 (20360589)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アトピー性皮膚炎 / C型レクチン受容体 / ハウスダストマイト |
研究実績の概要 |
ハウスダストマイト(HDM)はアレルギー性疾患における主要アレルゲンであり、HDMに対する免疫応答制御機構の全貌は未だ解明されていない。本研究ではHDMに対して感受性の高いNC/NgaマウスのClec10a遺伝子にナンセンス変異が存在することを見出し、HDM高感受性の原因であることを明らかにした。Clec10a遺伝子がコードするClec10aはC型レクチン受容体の1つであり、アレルギー反応における機能はこれまで不明だった。 HDMに対する免疫応答におけるClec10aの詳細な機能を解析するため、野生型(WT)及びClec10a遺伝子欠損(KO)マウスにHDMを塗布し皮膚炎を誘導した結果、Clec10a KOマウスで皮膚炎が増悪した。またHDM刺激後にClec10a KOマクロファージの炎症性サイトカイン産生が亢進したことから、Clec10aはマクロファージの活性化を制御する抑制性受容体であることが分かった。更にHDMに存在するClec10aのリガンドに対して、糖鎖解析手法の1つであるレクチンマイクロアレイ解析を行なった結果、Clec10aリガンドが高度に糖鎖修飾されたムチン様分子であることが示唆された。またLPS誘導性皮膚炎へのClec10aリガンドの添加により皮膚炎が抑制されたことから、Clec10aリガンドの抑制的機能が示唆された。ヒトにおけるマウスClec10aの機能的相同分子を探索した結果、ヒトAsgr1がマウスClec10aと同様にHDMに含まれるムチン様分子を認識し、HDM刺激後のマクロファージ活性化を抑制することが分かった。今後、ヒトにおけるClec10aリガンドおよびヒトAsgr1の役割を解明することにより、アトピー性皮膚炎に対する新規治療法開発に繋がる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1) HDMに対する免疫応答における Clec10a の機能の解明 野生型 (WT) およびClec10a遺伝子欠損 (KO)マウスにHDMを塗布し皮膚炎を誘導した結果、皮膚炎および皮膚マクロファージの炎症性サイトカイン発現がKOでWTと比較して亢進した。またin vitroで分化誘導した骨髄細胞由来マクロファージを HDM刺激した結果、炎症性サイトカイン産生がKOで亢進し、TLR4阻害剤によりKOのサイトカイン産生亢進が消失したことから、Clec10aはマクロファージのTLR4シグナルを制御する抑制性受容体であることが示唆される。 2) HDMに存在するClec10aリガンドの同定 HDMに存在するClec10aリガンド (Clec10a-L)をClec10a-Fcを用いて抽出し、レクチンマイクロアレイ解析を行なった結果、Clec10a-LはO型糖鎖を多く含むムチン様分子であることが示唆された。さらにLPS誘導性皮膚炎にClec10a-Lを添加することにより皮膚炎が抑制されたことから、Clec10a-LにはTLR4による皮膚炎を抑制する機能があることが示唆される。 3) ヒトにおけるマウスClec10aの機能的相同分子の同定と、アトピー性皮膚炎病態への関与の検証 候補分子であるヒトAsgr1およびヒトClec10aのHDMへの結合性を検証するため、各レポーター細胞を樹立し解析した結果、ヒトAsgr1がマウスClec10aと同様のHDM内糖鎖に結合することが示唆された。またヒトマクロファージのAsgr1遺伝子をsiRNAによりノックダウンした結果、HDM刺激後の炎症性サイトカイン産生が亢進したことから、ヒトAsgr1は抑制性受容体として機能することが示唆される。
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今後の研究の推進方策 |
1. Clec10aリガンドに含まれる機能的構造の同定 HDMに含まれる Clec10aリガンド(Clec10a-L)の抑制的役割を担う構造を明らかにする。Clec10a-Lに含まれる機能的糖鎖構造を同定するため、Clec10a-Lのレクチンアレイ解析、およびClec10a-Fcを用いたグリカンアレイ解析の結果から候補糖鎖を選択し、Clec10aとの結合性を検証する。Clec10aとの結合が確認された糖鎖について、LPS誘導性皮膚炎またはin vitroでLPS刺激したマクロファージに添加し、皮膚炎および炎症性サイトカイン産生を抑制する糖鎖をスクリーニングする。またClec10a-Lのコアタンパク質を同定するため、Clec10a-Lの質量分析を行う。 2. Clec10aリガンド糖鎖のヒトへの応用 1.で同定した抑制性リガンド糖鎖がヒトにおいて同様の機能を持つか検証する。ヒト末梢血よりマクロファージを分化誘導し、LPS刺激後の炎症性サイトカイン産生を抑制性リガンド糖鎖添加の有無で比較する。また同様にヒト皮膚を in vitroで刺激し、炎症性サイトカイン産生が抑制性リガンド糖鎖の添加により抑制されるか検証する。
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