研究課題
本研究の目的は、TPa(一千万気圧)領域におけるケイ酸塩の超高密度相の探索を、パワーレーザーによる動的圧縮とX線自由電子レーザーのパルスX線の組み合わせにより実現することにある。高圧実験技術の進展により、360GPa・数千Kという地球中心の温度圧力条件は(容易ではないが)再現できるようになったが、海王星・天王星といった巨大氷惑星、さらには木星・土星のような巨大ガス惑星の中心核の温度圧力条件の実現は未だ困難が多い。また、最近の系外惑星探査の進展により、多くの恒星が惑星系を持ち、スーパーアース(巨大岩石型惑星)やホットジュピター(小型ガス型惑星)と呼ばれる、太陽系には見られないような“異常な”惑星が、むしろ普遍的に存在することが明らかになりつつある。このような系外・巨大岩石型惑星のマントル部や、天王星などの巨大氷惑星の核はTPa・数千K領域の温度圧力にあると推測されるが、その条件の再現は技術的困難から容易ではないために、これら巨大惑星内部を構成する物質の物理・化学的性質について既に明らかになっていることは極めて少ない。本研究は、特にケイ酸塩の巨大惑星内部における物性を明らかにすることを目指すものである。今年度は、高密度相ケイ酸塩多結晶体を大型プレスにより合成して出発物質として用いることで、サブTPa・数千K領域を実現し、線結像型速度干渉計および放射温度測定システムを用いた衝撃波速度・温度測定に基づく衝撃圧縮下における状態方程式の決定、および、X線自由電子レーザーSACLAの高輝度パルスX線を用いた衝撃圧縮下その場X線回折測定によるケイ酸塩の相転移の探索を試みた。
2: おおむね順調に進展している
愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センターの共同利用制度を利用して大型プレスを用いた高圧試料合成を行い、高密度相多結晶焼結体(ブリッジマナイト)を合成して加工し、レーザー衝撃圧縮実験のための試料を準備した。また、大阪大学のレーザー研究所においてレーザー衝撃圧縮下光学測定によって、ブリッジマナイトの1TPa領域までの衝撃圧縮下における状態方程式を得ることができた。また、X線自由電子レーザー施設SACLAにおいてレーザー衝撃圧縮下その場X線回折測定を実施し、300GPa領域までのX線回折パターンを得た。ブリッジマナイトからpost-perovskite構造への相転移は観察されず、相転移のカイネティクス等についても検討する必要がある。
X線自由電子レーザー施設SACLAに設置されている衝撃波励起用レーザーの集光径やレーザーパルス形状を再検討し、より高圧領域での実験を試みる。また、良好なX線回折パターンを得るために、高密度相多結晶焼結体の粒径をより小さくするための合成条件の検討を行う。衝撃圧縮下における状態方程式についても、より低い圧力までのデータを取得することを計画している。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Minerals
巻: 10 ページ: 84~84
10.3390/min10010084