研究課題/領域番号 |
20H01195
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
合田 正人 明治大学, 文学部, 専任教授 (60170445)
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研究分担者 |
石原 悠子 立命館大学, グローバル教養学部, 助教 (40846995)
志野 好伸 明治大学, 文学部, 専任教授 (50345237)
竹花 洋佑 大谷大学, 文学部, 非常勤講師 (60549533)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 東アジア哲学 / 京都学派 / 現象学 / 儒教 / 道教 / 新東亜秩序 / 三木清 / 和辻哲郎 |
研究実績の概要 |
当初は本研究2年目の活動として、パリ第七大学での第二回東アジア哲学国際学会(ISEAP)の開催と、スプリンガー(Springer)社からのJournal of East Asian Philosophy(JEAP)の創刊を目指していたが、新型コロナウィルス感染症拡大のため、学会の実施は2021年度も実現できずオンライン形式で実施し、対面形式での実施は2022年度に持ち越された(2023年3月23日、於明治大学駿河台校舎)。また、Journalの創刊は2021年度となった。ただ、翌年度(2021年度)には、Journal第2号を公刊することができたのは大変嬉しい成果であった。 困難な状況のもとで、上記の成果を挙げるために、胡潁芝氏(御茶ノ水大学、明治大学兼任講師)に引き続きISEAPならびにJEAPの運営、編集のために雇用した。加えて、オンライン方式での連続講演会などを組織するとともに、様々な国の研究者から投稿される原稿の点検、特集企画の検討などにあたった。 東アジア哲学の新たな構築をめざしてのそれぞれの研究活動を基に、上記の作業を遂行した結果として、2022年度7月より5回の「東アジア哲学レクチャーシリーズ」をオンライン形式で実現した(明治哲学研究所Meiji Institute of Philosophy[MIPs}との共催)。また、JEAP の創刊にあたっては、創刊記念国際シンポジウムを2022年度9月11日に開催した。更に、JEAPについては、第一号を2021年度11月に、第二号を2022年度7月に刊行することができた。第一号は7本の論文、第二号は論文6本、翻訳1本、書評1本を掲載している。 各々の内容は次項で示すが、時間的には遅延が生じたとはいえ、東アジア哲学の新たな構築を支える二つの軸としての、国際学会の開催、Journalの刊行という課題を果たすことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウィルス感染症拡大のため、対面形式での学会開催が不可能となったのを踏まえて、オンライン形式で連続講演会「東アジア哲学レクチャーシリーズ」を開催した。第一回2021年7月7日:志野好伸「張東そんにとっての中国哲学」、第二回2021年8月4日:小倉紀蔵(京都大学大学院人間・環境学研究科)「北学と東学:近代をめぐる韓国と北朝鮮の哲学史解釈」、第三回2021年10月6日:頼住光子(東京大学大学院人文社会系研究科)「道元『正法眼蔵」の世界観」、第四回2021年12月1日:野家啓一(東北大学)「近現代日本の科学哲学」、第五回2022年2月2日:合田正人(明治大学)「翻訳としての哲学ーー「である」の冒険」、以上がその内容である。毎回、内外の多数の視聴者が集まり、極めて活発な議論が展開された。 2021年12月10-11日にオンライン形式で、第二回ISEAP大会を開催した。基調講演は、1)P.J.IVANHOE(ジョージタウン大学):「 Dasan 茶山 on ''Sympathetic Consideration''(Seo 恕)」、2)遊佐理子(ウェストワシントン大学):「Nature, Language, Art and Environment」。16の分科会で、計48名が研究発表を行った。視聴者は約80名で、大変嬉しいことに、盛会であった。加えて、2023年3月23日に本科研費によるシンポジウム「科学と神秘」を明治大学駿河台キャンパスにて開催した。胡潁芝(明治大学)「夏目漱石の「自然」」、合田正人(明治大学)「科学は神秘を創造するーー寺田寅彦と来たるべき知の相貌」、竹花洋祐(福岡大学)「他力という神秘」、井上貴恵「近代日本におけるイスラーム神秘主義へのまなざしーー井筒俊彦を中心に」の四本の発表がなされた。これらを踏まえて、困難な状況下でも概ね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
ほぼ三年間、大変困難な状況下で研究を遂行せざるをえなかったが、すでに記したように、本研究のメンバー四人に加えて多数の方々の協力を得て、何よりも、数多くの海外の大学で教育研究に従事するアジア哲学研究者と交流し、彼らの口頭での研究発表に接するのみならず、内外からの数多の論文投稿により、本研究は東アジア哲学の新たな構築という目的の達成に向けて順調に前進していると言ってよい。 しかし、今後の最大の課題として、何よりも第三回ISEAPの学術大会を対面形式(とオンライン併用)で企画しかつ実現しなければならない。この点については、すでに2023年9月15-16日にエディンバラ大学での開催を決定し、「随筆」という日本独自の表現形式を総テーマとして、発表者を募っている。エディンバラ大学「哲学、心理学、言語科学学部」のスタッフたちともすでに交流を重ねており、海外初の学会主催に万全を期して臨む所存である。 上記野家啓一氏の講演、2023年3月の学術大会での合田正人の発表は、自然科学の分野にも本研究の範囲を広げる可能性、いや、広げなければならないという必要性を告げているように思われる。すでに長きにわたって研究協力を行っているティエリ・オケ氏(パリ第10大学)のような、生命哲学者との協力関係を更に強化したい。 加えて、2023年3月の学術大会での井上帰恵氏の発表は、本研究がイスラーム思想を視野に収めなければならないことを教示するものであったのみならず、井筒俊彦らのイスラーム研究が日本におけるアジア主義という極めて大きな問題と関わっていることを浮き彫りにしてくれた。例えば井筒と縁の深い大川周明を評価した人物のひとりが中国研究家・竹内好であったことを思う時、この点に本研究が焦点を合わせることは不可欠であろう。すでに合田は竹内好と鶴見俊輔というテーマでの発表を過去に行なっており、その拡充をめざしたい。
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