研究課題/領域番号 |
20H01200
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
木下 千花 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (60589612)
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研究分担者 |
谷 慶子 立命館大学, 映像学部, 准教授 (00870453)
ワダ・マルシアーノ ミツヨ 京都大学, 文学研究科, 教授 (10796238)
菅野 優香 同志社大学, グローバル・スタディーズ研究科, 准教授 (30623756)
斉藤 綾子 明治学院大学, 文学部, 教授 (90339573)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 日本映画史 / ジェンダー / クリエイティブ労働 / 映画産業史 / 女性史 / セクシュアリティ |
研究実績の概要 |
本研究は、「女性性映画パイオニア」、つまり監督やプロデューサー、編集や記録などのスタッフ、さらに批評家など広義の「作り手」として映画産業に貢献した女性の活動と作品の発掘を目指し、これまでに様々な方法で、その研究成果を発表してきた R2年度はメンバー全員参加によるオンライン研究会を3回行った。10月には映画製作に携わった女性に関する記事が掲載された『婦人公論』1957年8月号を通じて議論をした。12月には、メンバーの谷慶子がスクリプターの仕事について、実際に使用した書き込みがある脚本を用いて講義を行った。R3年2月には、池川玲子氏(大阪経済法科大学)を招いて講演「「大東亜」の女性映画人:鈴木紀子と坂根田鶴子」をお願いし、戦時下の満洲で映画製作を行っていた監督・坂根田鶴子について語ってもらった。 (以下、繰越分)R3年8月29日には、国立映画アーカイブ小ホールにて、特集上映「望月優子と左幸子 女優監督のまなざし」を行い、望月優子が監督した作品3本、左幸子が監督した作品1本を上映した。また、メンバーである斉藤綾子、鷲谷花によるトークショーも行い、女優が監督を行ったことの意義について語った。同9月25日には、「日本映画における女性パイオニア」専用のウェブサイトを開設した。まずは、女優として活躍し、監督として作品も残した望月優子と左幸子、日本で最初の女性監督とされる坂根田鶴子を取り上げ、三人のプロフィール、特徴についての論稿を掲載した。また、映画専門用語を掲載した用語集のページ、メンバーが女性映画人について執筆した論稿のリンク集も掲載した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
理由 R3年9月に公開したウェブサイト「日本映画における女性パイオニア」https://wpjc.h.kyoto-u.ac.jp/がメンバーの研究発表およびアウトリーチの場として機能するばかりではなく、とりわけ映画業界への女性の参加と、性被害の問題を含む労働環境への関心を背景に、大きな関心を呼んだ。編集スタッフ(相川千尋・辰巳知広)の尽力により、ほぼ1ヶ月に1編のペースで学術的裏付けのある紹介エントリーやインタビュー、語句説明を発表した成果である。ウェブサイト以外の進捗状況は以下のとおり。 木下千花:日本映画における妊娠の表象における女性映画人・医師・文化人の役割について研究を進め、分担執筆の論考を出版した。菅野優香:『クィア・シネマ・スタディーズ』(晃洋書房)を編著者として出版した。引き続き、戦前の女性文化人や1970年代のウーマン・リブ運動と映画文化との関係について研究を続けている。斉藤綾子:日本映画の黄金時代にまず女優としてキャリアを築いた田中絹代(1909-1977)、左幸子(1930-2001)、望月優子(1917-1977)が監督した作品について、講演やトークショー、論文等を通じて、幅広く研究成果を公表した。谷慶子:スクリプターとして日本映画黄金期に活 躍した堀北昌子(1930-)への聞き取り結果をまとめ、ウェブサイトに掲載した。鷲谷花:監督者としての望月優子に関する調査を行い、論稿を発表した。ミツヨ・ワダ・マルシアーノ:羽田澄子(1926-)について、京都文化博物館などでの資料収集・分析と聞き取り調査を行っている。辰已知広:森英恵が映画衣裳をデザインした作品について、査読論文を発表した。引き続き映画会社、島根県立石見美術館の協力を得つつ、英語論文の投稿、ウェブサイトのための論稿を準備 している。
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今後の研究の推進方策 |
6月4、5日に京都大学において開催される日本映像学会第48回大会では、研究代表者が実行委員長を務め、本研究プロジェクトと共催でシンポジウム「カメラを持った女」を開催する。昨年度8月に国立映画アーカイブで上映し話題を呼んだ望月優子監督作品『ここに生きる』(1962)の16mmプリントを鷲谷研究分担者が発 見してデジタル化した。これに英語・日本語字幕をつけ、オンラインで配信するとともに、鷲谷が講演を行い、国内外の映画研究者に対して本作品のフェミニスト映画史と社会運動史における意義を明らかにする。さらに、熊谷博子(ドキュメンタリー)、山城知佳子(メディアアート)、横浜聡子(商業映画)の三分野でそれぞれで活躍する女性監督を招き、座談会を行う。 「日本映画における女性パイオニア」ウェブサイトでは毎月「パイオニア」のエントリーやスクリプター(記録係)へのインタビューを更新し、学術的な裏付けのあるオンラインリソースとして発信を続ける。今年度は科研メンバーが羽田澄子、水木洋子、吉屋信子などのエントリーを執筆するほか、外部にも原稿を依頼してコンテンツの充実をはかるとともに、日本におけるフェミニスト映画史の拠点として役割を果たす。記事の公開にあたっては厳密な内容チェックを続けるほか、プロの編集者による進行管理と校正、アーカイブや権利保持者(映画会社)と密接な連携によって可能になる貴重な写真資料の活用に昨年度と同様に重点的に予算を執行し、ウェブサイトの質を保って有効なアウトリーチを行う。 COVID-19状況が許せば、年度末に開かれるSociety for Cinema and Media Studiesの年次大会に参加し、成果を英語で発信し海外のフェミニスト映画史家との研究交流を行いたい。 2月には国立映画アーカイブにおいて女性映画人の特集上映が計画されており、連携して座談会や講演を行う予定である。
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