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2023 年度 実績報告書

パフォーミング・アーツによるダイバーシティ活性化と現実多様性受容の心理文化間研究

研究課題

研究課題/領域番号 20H01224
配分区分補助金
研究機関帝塚山学院大学

研究代表者

猪股 剛  帝塚山学院大学, 人間科学部, 准教授 (90361386)

研究分担者 宮坂 敬造  慶應義塾大学, 文学部(三田), 名誉教授 (40135645)
川嵜 克哲  学習院大学, 文学部, 教授 (40243000)
田中 康裕  京都大学, 教育学研究科, 教授 (40338596)
唐澤 太輔  秋田公立美術大学, 大学院, 准教授 (90609017)
石倉 敏明  秋田公立美術大学, 大学院, 准教授 (90649310)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2025-03-31
キーワードダイバーシティ / 意識変容 / 破壊と再生 / 現実性 / 日本における私
研究実績の概要

2023年度は、当初の計画通りに研究を遂行することができた。
国際的な調査が進展し、パフォーミングアーツに見られる「パフォーマンス性」が、その都度の一回生の体験を活性化することを通じて、それまでの経験的な知識や固定的な観念を柔軟にする効果をもたらし、それによって、「いま、ここ」で提示されている現実が多様性を帯びて現出すると共に、それを鑑賞する鑑賞者たちは、ダイバーシティの受容度を高めことができることがわかった。それは、ダイバーシティに対する知的な理解とは異なり、多様性を自らが関わり体験し理解するものとなっていく。
その際の体験的な課題は、ダイバーシティが豊かな心地良いものとして体験されるだけでなく、違和感のあるものや受け入れがたいものとして体験されるという点であることも明らかになった。しかし、逆説的に、この受け入れがたく拒絶したいという体験が、逆に知的な理解とは別種の、体験的で継続可能な理解をもたらすことになることもわかり、今後の課題は、この受け入れがたい体験をそれでも体験していく際にどのような要因が、体験と理解を支え促進するのかを明確にすることになってきている。
このような研究は、2023年度の国際箱庭療法学会において“Destraction and Rebirth: Multi-cultural Dialogue”として発表されると共に、著書『家族のおわり、心のはじまり』において一部公開されると共に、国内学会ではユング心理学研究において「意識の発明と無意識の発明、個人と共同の道程」として発表され、ピアサポート学会において「分析心理学から見た個人と集団」として発表された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

概要にも記したとおり、当初の計画通りに研究は進んでいる。
国内でのパフォーミングアーツの調査は、舞台芸術やツアー・パフォーマンス等に留まらず、コロナ下での自粛が終わり、地域の祭事や伝統芸能に対しても進められることができてきた。とくに、熊本での美術と水俣での表現に関する調査、佐渡島での芸能の調査、鶴岡での黒川能についての調査によって、研究は大きな進展を遂げることができたと考えられる。
また、国際的にも昨年度の南米および北米の調査に加えて、年度末から年度初めにかけてのイスラエルでの調査および8月および3月のヨーロッパにおける調査によって、表現活動の精神性の側面がより明確になり、最終年度を前に研究資料はおおよそ調い、最終年度にそれをまとめたて発表する準備が整った段階に来ている。
特に、パフォーマンスを通じて、集団的な熱狂や一時的な理解へと向かうことと、個人が悩みながら思索する段階を経他の地にたどり着く理解の差異が明確になってきている。それは、たとえば黒川能の伝統的で様式化されたパフォーマンスの中に、かならず新たな世代が、これまでの慣習からわずかながらでも外れるパフォーマンスを組み込む際に見て取れるものであり、またアーティストやパフォーマーと鑑賞者による対話やシンポジウムなどを通して活性化される点にも見て取れるものであった。
今年度の研究は、国際学会発表二件、国内学会発表一件、国内学会誌一件、著書一件にまとめられて、公にすることもできている。

今後の研究の推進方策

ここまで研究計画通りに進めてこられた本研究は、今年度でその最終年を迎えることになる。
本年は、まずこれまでの研究成果をまとめ、それを公にして社会に還元することに重点が置かれることになる。現在計画しているものとして、共著書が二冊、単著が一冊、合計三冊の書籍の公刊があげられる。一つは、個別と集合という観点に重きを置いて、パフォーマンスの制作体験と鑑賞体験がそれぞれ意識の変容を促し、多様な心の展開を促すことを論じるものになる予定である。二つ目は、歴史的に見た時の儀礼体験・美術体験、そしてVRやARといった現代的なパフォーマンス体験の差異に注目しながら、過去から現在におけるパフォーマンスを通じた意識変容体験を比較検討して論じていくものになる。最後の三つ目のものは、臨床現場やフィールドワークを通じてインタヴューしてきた現場の声を紹介しながら、ひとつ一つの個別性から立ち上がる普遍的な意識変容の様子を、その質的な変化に注目しながら論じるものとなる予定である。
また、同時に8月には国際学会において日本におけるパフォーマンスと意識変容について発表する予定であり、また3月にはドイツにおいて国際研究会において発表する予定としている。
また、意識変容に際して生じる不安や苦悩といった体験が単に不安に終わるのではなく、そこから発展的な展開を促すことになるのかという点について、さらなる調査を進めることも考えており、それは富山県の伝統工芸や佐渡島の鬼太鼓の継承などを調査することによって進めていく計画である。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件) 図書 (3件)

  • [雑誌論文] 意識の発明と無意識の発明、個人と共同の道程2024

    • 著者名/発表者名
      猪股剛
    • 雑誌名

      ユング心理学研究

      巻: 16 ページ: 51-62

    • 査読あり
  • [雑誌論文] ユング心理学の歴史的展開--ユング前期vsユング後期--2024

    • 著者名/発表者名
      猪股剛
    • 雑誌名

      ユング心理学研究

      巻: 16 ページ: 123-152

  • [雑誌論文] 私たちにとっての『リアリティ』とは何か?2023

    • 著者名/発表者名
      猪股剛・溝井裕一・富澤京子・桑原知子
    • 雑誌名

      箱庭療法学会

      巻: 36 ページ: 76-106

  • [学会発表] The establishment of the individual through the rebirth of the community: A woman in her 40's in the process of sandplay therapy2023

    • 著者名/発表者名
      Tsuyoshi Inomata
    • 学会等名
      26th Congress of the International Society of Sandplay Therapy
    • 国際学会
  • [学会発表] Destraction and Rebirth: Multi-cultural Dialogue2023

    • 著者名/発表者名
      Tsuyoshi Inomata
    • 学会等名
      26th Congress of the International Society of Sandplay Therapy
    • 国際学会
  • [学会発表] The Emergence of Psychology through a Pitfall of the collision between Buddhists and Western2023

    • 著者名/発表者名
      Tsuyoshi Inomata
    • 学会等名
      The International Society of Sandplay Therapy
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 分析心理学から見た個人と集団2023

    • 著者名/発表者名
      猪股剛
    • 学会等名
      日本ピア・サポート学会
    • 招待講演
  • [図書] 家族のおわり、心のはじまり2023

    • 著者名/発表者名
      猪股 剛、兼城 賢志、大録 慈、植田 静、村田 知久、ヴォルフガング・ギーゲリッヒ、北山 純、西山 葉子、相樂 加奈、宮澤 淳滋
    • 総ページ数
      384
    • 出版者
      左右社
    • ISBN
      4865283617
  • [図書] 夢と共に作業する2023

    • 著者名/発表者名
      ヴォルフガング・ギーゲリッヒ、猪股剛
    • 総ページ数
      392
    • 出版者
      日本評論社
  • [図書] ヨーガと瞑想の心理学2023

    • 著者名/発表者名
      C.G.ユング、猪股剛、河合俊雄
    • 総ページ数
      520
    • 出版者
      創元社

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公開日: 2024-12-25  

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