研究課題/領域番号 |
20H01237
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国際仏教学大学院大学 |
研究代表者 |
牧野 和夫 国際仏教学大学院大学, 日本古写経研究所, 特別研究員 (70123081)
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研究分担者 |
落合 俊典 国際仏教学大学院大学, 仏教学研究科, 教授 (10123431)
前島 信也 国際仏教学大学院大学, 日本古写経研究所, 研究員 (10805922)
高橋 悠介 慶應義塾大学, 斯道文庫(三田), 准教授 (40551502)
上杉 智英 独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館, 学芸部美術室, 研究員 (50551884)
野沢 佳美 立正大学, 文学部, 教授 (80277748)
南 宏信 佛教大学, 仏教学部, 講師 (80517003)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 宋版一切経 / 福州版大蔵経 / 思渓版大蔵経 / 東山交流圏 / 九条道家 / 禅律僧 / 六波羅探題 / 聖教調査 |
研究実績の概要 |
基本的には本研究の目的に即した継続研究として、本年度も宋版一切経の調査研究につとめ次のような調査を実施し研究を行った。 (1)ズーム形式の研究会への参加・発表を行ったが、舶載宋版一切経の受け入れ側である我が国の宗教的な環境に関する聖教類の新知見の報告の段階にとどまった。 (2)知恩院・醍醐寺蔵大蔵経の部分的な実地調査を継続して行う予定であったが、引き続くコロナ禍により実行取止めを余儀なくされた。本源寺蔵大蔵経の継続調査も引き続くコロナ禍により実施できなかった。コロナ禍による出張調査困難な場合を想定して計画していた令和2年度翌債分の福州版調査の手引き書の編集・図版選定・執筆を進め、令和3年において集中的に実施し2月に刊行することができた。併せて今後の調査の一助に役立ててもらうべく有効な活用を期して広く関係各機関・研究者へ献呈した。今後も更に内容の充実を期して事例収集を進めていく。 (3)知恩院・醍醐寺蔵大蔵経の部分的な実地調査を継続して行う予定であったが、引き続くコロナ禍により実行取止めを余儀なくされた。(4)大蔵経舶載受容に関する問題を、鎌倉中後期の寺院史・政治史の方面に展開して考える必要もあり、その方面の資料収集・実地踏査に琵琶湖東や叡山文庫へ赴き、四国覚城院聖教(於大阪大学)資料調査のために出張・調査を行った。併せて宋版一切経受容の宗教的な背景の解明に向けた取り組みにも着手したが、鎌倉後期・南北朝期に齎された舶載一切経の詳細な調査には及ばなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主たる目的のひとつが出張書誌調査である。可能な限り調査を予定していたが、本年度も実施困難であった。その場合に予定していた主要な計画が調査実施に必須の工具書(重要な手がかりとなる刻工名の一覧を含む)の編集・刊行で、今後の調査の進捗を計る上で喫緊の課題でもあった。福州版に特有な性格を明確にし、極力その独自性を調査に活かした調査ハンドブックを作成し、調査に携わる後学の便宜をはかり、関連機関・同学諸氏へ献呈し斯界に資するということでもあった。編集・執筆・図版選定の実務を繰り返し実施し、年度内に刊行・献呈という目標はほぼ達成できた。今後は、他蔵の福州版一切経の調査に基づく、事例の増補、新知見を加えて訂正・修補を進める。新たに思渓版一切経の調査を進め、思渓版独自の特徴を見出し、最も適応した調書の作成に取り組む。 しかし、出張書誌調査が本研究の柱であることに変わりはなく、当然コロナ禍収束の見通せる時点で、複数の移動・同一空間での作業を避けた個人で行う調査の再開を試みる必要があり、本年度はその試みに着手できなかった。今後の計画的な推進が望まれるところである。 今後の調査活動に向けた版経関連資料の蒐集などにも着手したが、宋版一切経の書物としての側面を考える上で、実物のもつ重要性は何物にもかえがたく(料紙など)、今後も拡充につとめる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究が継続中の福州版大蔵経調査を引き続き行い、常に新知見の共有化を目指し書誌学方面の宋版一切経の調査の充実につとめることは勿論であるが、新たに思渓版などを視野に入れた舶載宋版大蔵経の全体像を把握すべく、版式の同異・収納函の規格や料紙の問題に取り組む。福州版と思渓版他との相互の係りに留意すべき精細な調査に着手し試験的な分析を行う。新たに思渓版などの日本現存宋版大蔵経の調査研究を 視野に入れることで可能となる精細な相互の比較検討にも及ぶが、その際に版本の識別 基準「刊・印・」に関する詳細な調査(特に刻工名)が必須となっている。併せて受け入れる側(アジアの中の日本)の宗教的な背景等についても聖教調査などの成果に基づく資料的な充実を目指す。
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