研究課題/領域番号 |
20H01241
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
福満 正博 明治大学, 経営学部, 専任教授 (60165313)
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研究分担者 |
加藤 徹 明治大学, 法学部, 専任教授 (80253029)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 女巫・男覡 / 王国維「宋元戯曲考」 / 周礼 / 妓女 / 京劇 |
研究実績の概要 |
福満は、今年度は、科研費を申請した時点では想像すらしなかった、新型コロナの世界的流行で、中国現地における調査が、全くできなかった。そこで儺戯の調査は今年度断念した。 科研費を申請した主要な目的の一つである儺戯の研究は、現地調査と、文献研究という違いがあるが、演劇成立における巫覡の研究とも置き換えらないわけではない。 そこで代わりに、巫覡の歴史を文献的に見直すことにした。中国演劇研究の金字塔ともいうべき王国維の『宋元戯曲考』は、古代の演劇の起源として巫覡の存在を挙げている。甲骨文・金文などの先史時代から、周代までの巫覡に関する文献研究をした。また、元曲における妓女に研究も並行して行っている。結果として、「元曲における妓女について(1)―1,中国における妓女の歴史」「元曲における妓女について(1)―2,中国における妓女の歴史」の二本の論文を書いた。
加藤も、今年度はコロナ禍のため国内外の現地調査を大幅に縮小せざるをえなかった。そのぶん、日本国内外の文献資料を活用して日中間の芸能文化の伝播についての研究を行った。その研究成果の一部は単行本【加藤徹『漢文で知る中国』(NHK出版、2021年1月25日刊、総240頁)】に反映した。具体的には、中国禅の「遊戯三昧」の思想と日本の『梁塵秘抄』の今様の関係、古代中国の儺礼と日本のおにやらいの関係、京劇の名優・梅蘭芳の来日公演と与謝野晶子・永井荷風の関係などを本書のなかで論じ、研究成果の社会還元を図った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
福満は、コロナの流行の影響で、図書館まで閉鎖されてしまい、文献研究も十分にできたとは言えない。それでも、先史時代の甲骨文・金文の時代や、『周礼』などの文献を見てみると、予想したほど、その存在は大きくないことが分かった。特に女巫と男覡と区別して考察してみると、女巫の役割は想像したよりもずっと小さなものであることが分かった。 また、元曲における妓女に関する作品の研究中で、これも予想外のことであるが、禅宗の影響があることがわかった。
加藤は、今年度はコロナ禍のため国内外の現地調査を大幅に縮小せざるをえなかった。また日本国内で予定されていた京劇関連の公演やイベントも次々と中止・延期になった。その中で、例外的に上演にこぎつけた、【(1)京劇「白蛇伝・断橋」「水滸伝・林冲」2020年8月29日 東京都世田谷区・北沢タウンホール 出演 新潮劇院 (2)京劇・能楽合同公演「覇王別姫」 2020年10月18日 銕仙会能楽研修所本舞台 出演 張春祥、張桂琴、西村高夫】 の2公演については練習から公演後まで密着して調査を行うことができた。また日本への中国伝統芸能の渡来と受容の歴史的背景を調査研究する過程で、『法華経』の「妙音成仏」の思想や漢訳仏典の音楽的読誦の伝統の影響があること、明治から昭和初期までの日中音楽交流の背景には楽器商の活動があったこと、などが明らかになり、こちらの方面の資料も収集した。
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今後の研究の推進方策 |
福満は、2021年度中に、世界的なコロナの状況が完全に改善されるとは思えないので、続けて国内において文献研究を中心に、研究を続けたい。今年は、「詩経」・「楚辞」などの文献を中心に、巫覡の役割について研究したい。 また、元曲における妓女に研究も並行して行っているが、そのためには禅宗(仏教)の研究と、全真教(道教)の研究をしなければならないと思っている。
加藤は、2021年度中も実地調査や来日公演の調査がコロナにより制限される可能性を考慮し、引き続き、日中芸能文化の交流と伝播を促進する社会的な要素、例えば楽器商の経済的活動や、日本仏教の妙音成仏の思想と梵唄や梵音具の関係についても、引き続き調査する。後者の日本仏教と伝統芸能の関係についての研究は、福満教授の中国仏教・中国道教の研究と補完的関係になることが期待できる。
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