研究課題/領域番号 |
20H01252
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 武蔵大学 |
研究代表者 |
渡辺 直紀 武蔵大学, 人文学部, 教授 (80409367)
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研究分担者 |
波田野 節子 新潟県立大学, その他, 名誉教授 (50259214)
熊木 勉 天理大学, 国際学部, 教授 (70330892)
柳 忠熙 福岡大学, 人文学部, 講師 (90758202)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 韓国文学 / 文化冷戦 / 母語 / 引揚 / 帝国大学 / フェミニズム |
研究実績の概要 |
令和2(2020)年度は「1950-60年代韓国文学と〈母語〉の創造/想像――日本語からの脱却の苦闘」をテーマに、日本語世代の作家がいかに日本語から訣別しようとしたか、あるいはその努力にもかかわらず、解放後にもそこからの脱却に苦悶したかについて研究を行った。また、本科研課題「冷戦文化形成期(1945-1970)韓国文学・文化史の再認識」で設定された他のテーマ(引揚、知性史と高等教育、アメリカと東アジア、韓国学の形成)などについても、関連の研究を同時に少しずつ進めた。 共同研究者はほぼ月1回、ズーム会議を開いて互いの研究の進捗状況を報告した。また、コロナ禍の影響で今年度も海外への調査や会議出張がかなわなかったので、ズーム会議システムで、関連の研究会や国際シンポジウムを次のように行った。(研究会/2020 年 6 月 20 日開催)李彗真(イ・ヘジン/韓国・世明大)「鄭人澤の文学と総力戦」発表、(国際シンポジウム/2020 年 7 月 18 日開催)「解放後の韓国文学・文化史の再認識・Ⅰ」、金在湧・波田野節子・熊木勉・芹川哲世・閔東曄・金牡蘭・金景彩発表、(国際シンポジウム/2020 年 8 月 8 日開催)「トランス、フェミニズム――キム・ジヨンをともに読む」、金ヨンロン・内藤千珠子・イ・ヘリョン・オ・へジン・村上陽子・リュ・ジニ・康潤伊発表、(国際書評ワークショップ/2021年1月11日開催)「ポスト帝国と東アジア――米山リサ『冷戦の廃墟で』(Cold War Ruins)を読む」、クォン・ボドゥレ・イ・ユンジョン・キム・ギョンチェ・Julia Clark・高榮蘭・鳥羽耕史発表、(国際シンポジウム/2021年2月27日開催)「解放後の韓国文学・文化史の再認識・Ⅱ」、芹川哲世・申知瑛・金慧仁・李文茹・許智香・鄭鍾賢発表。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2(2020)年度は「1950-60年代韓国文学と〈母語〉の創造/想像――日本語からの脱却の苦闘」をテーマに、日本語世代の作家がいかに日本語から訣別しようとしたか、あるいはその努力にもかかわらず、解放後にもそこからの脱却に苦悶したかについて研究を行うことができた。コロナ禍で海外調査や研究者うちあわせは実施できなかったが、ズーム会議や研究会などを開催し、互いの研究成果を発表することで、かなりの程度、それを埋め合わせることができた。 また、本科研課題「冷戦文化形成期(1945-1970)韓国文学・文化史の再認識」で設定された他のテーマ(引揚、知性史と高等教育、アメリカと東アジア、韓国学の形成)などについても、関連の研究を同時に少しずつ進めることができた。また、本科研で設定している他の年度のテーマ、「帝国大学の人文学研究と韓国・台湾」、「解放後韓国文学における批評理論と内なる〈アメリカ〉――日本との比較」、「1960年代の韓国における民族本質論と「韓国学」の形成――鏡としてのアメリカ・日本」についても、準備ができたところから少しずつ研究を進める準備ができている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は予定通り「大日本帝国崩壊後の引揚経験と記憶の形象化――日本・朝鮮・中国(満洲)・台湾・樺太」をテーマに資料を収集し研究を行なう。アジア・太平洋戦争の終結と大日本帝国の崩壊によって、この地域の多くの人々があらためて移動・移住を余儀なくされた。朝鮮半島を中心に考えると、満洲や中国大陸に軍人として、また生活者(主に農業従事者が多数)として居住していた朝鮮人らは、解放後、祖国をめざして「帰還」するが、また日本に居住していた多くの朝鮮人らも、その条件にある者は「帰国」を目指した。また1950-53年の朝鮮戦争で、南北が対峙して戦争を行ったことは、彼らの移住・定着にも大きく影響した。この時期にあらためて38度線を越えて移住した者は、家族が離散するなどのほかにも、イデオロギー的に大きな試練を経て、苛酷な再定着を余儀なくされた。このように、朝鮮半島における、解放直後・朝鮮戦争後の民族の移動(引揚、避難など)が、いかに記憶され、時に文学作品に反映されたり、特殊な記録を経たりした経緯に対する調査・研究を、本年度は行っていく。 2021年7月と2022年2月に国際シンポジウムを、2021年10月に国内研究会を、2022年3月に北米での資料調査をそれぞれ予定しているが、コロナ禍で海外渡航が困難な場合は、ズーム研究会などに切り替えて、情報交換の機会を確保したい。また、本科研で設定している他の年度のテーマ、「1950-60年代韓国文学と〈母語〉の創造/想像――日本語からの脱却の苦闘」、「帝国大学の人文学研究と韓国・台湾」、「解放後韓国文学における批評理論と内なる〈アメリカ〉――日本との比較」、「1960年代の韓国における民族本質論と「韓国学」の形成――鏡としてのアメリカ・日本」についても、準備ができたところから、少しずつ研究を進めていく。
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備考 |
【翻訳】鄭鍾賢(熊木勉・訳)「植民地文学にあらわれた帝国大学」『朝鮮学報』255輯、89-108頁、2020年6月【書評】渡辺直紀「大韓民国臨時政府の精神を貫く母子二代の苦悩に満ちた現代史―『長江日記』『永遠なる臨時政府の少年』」『図書新聞』2020.9.19(3464号)、2面
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