研究課題/領域番号 |
20H01254
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
広瀬 友紀 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (50322095)
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研究分担者 |
伊藤 たかね 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (10168354)
大関 洋平 東京大学, 大学院総合文化研究科, 講師 (10821994)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 予測処理 / アクセント / 京阪アクセント |
研究実績の概要 |
2020年度は、新型コロナウイルスの蔓延により、視線計測や脳波計測などの対面実験が予定通り行えなくなったため、インターネットを用いた遠隔実験の利点を活かし、国内の遠隔地に住む被験者を対象にする反応時間計測実験を行うという前提で最適な計画選定を、ベルリン・フンボルト大学の伊藤愛音氏との共同研究として氏の協力を得つつ行った。そこで、東京方言話者と近畿方言話者のグループを対象にした、近畿方言におけるアクセント変化現象を利用した実験を集中的に進めることとした。近畿方言では、語彙アクセントの「式」「型」の違いを利用して、アクセント変化による純粋な音韻情報レベルの予測のあり方を調べることができる。具体的には、modifier(低起式平板型/高起式平型)+ head(低起式平板型/高起式平型)の形式をとる以下のような二文節からなる名詞句を用意する。低起式modifierについては、後続するheadのアクセント式によって発現型が異なることになる。 (1)ちゃいろのきつね (低起式+低起式):LLLH LLH, (2)ちゃいろのきりん(低起式+高起式):LLLL HHH, (3)きいろのきつね(高起式+低起式):HHHH LLH, (4)きいろのきりん(高起式+高起式):HHHH HHH こうしたフレーズを用いたvisual world paradigmの(ただし一般的な視線計測でない、反応時間計測)実験により、headに用いられる語の音韻情報(ここではアクセントタイプ)が予測できるかどうかという点を、受動的理解状況と、聞き手とのやりとりの一部であるという設定下において検討した。この結果、興味深いことに関西方言話者のみならず東京方言話者においても(2)のケースにおける名詞処理の促進効果がみられた。これはより通言語的な音韻制約による効果である可能性について1件の学会発表を行い、後続実験の準備をすすめた。この他、分担者メンバー、指導学生とともに、既存のデータの成果発表・論文化に力を入れた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画には大きな変更を余儀なくされたが、状況に柔軟に対応することで、結果的には順調に進展しているといえる。2020年度は、新型コロナウイルスの蔓延により、視線計測や脳波計測などの対面実験が予定通り行えなくなったが、インターネットを用いた遠隔実験の利点を活かし、国内の遠隔地に住む被験者を対象にする反応時間計測実験を行うという前提で最適な計画選定を行った。3つの実験を行い、うち2件については国内学会にて成果発表を行い、さらなる1件については現在投稿論文として執筆中である。同時に、対面実験が可能になり次第データ収集ができるように視線計測および脳波計測実験の材料やセットアップも進めている。
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今後の研究の推進方策 |
まず、対面実験が可能になり次第データ収集ができるように視線計測および脳波計測実験の材料やセットアップを進める。これと平行して、2020年度に行った実験結果を踏まえ、予想外の現象の説明も含めた理論的検討をすすめる。このため、2021年度は視線計測・予測処理・音韻論・中国語・台湾語の計画を進めるため新しい分担者を加え、チームとしての体制をこれまで以上に整える。
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