研究課題/領域番号 |
20H01256
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
澤田 英夫 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (60282779)
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研究分担者 |
新谷 忠彦 東京外国語大学, その他部局等, 名誉教授 (90114800)
加藤 昌彦 慶應義塾大学, 言語文化研究所(三田), 教授 (30290927)
大塚 行誠 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 講師 (90612937)
倉部 慶太 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 助教 (80767682)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ビルマ(ミャンマー) / チベット=ビルマ系言語 / 音韻変化 / 文法化 / 言語類型論 |
研究実績の概要 |
コロナウイルスによる国内外の危機的状況が未だ収束しないため、ミャンマー国内での調査は見合わせざるを得なかった。そのため、以下のような活動を行った。(1) 国内あるいはミャンマーに居住する、研究対象言語あるいはそれと系統の近い言語の話者を対象に、オンライン(Zoom、インタネット電話)で対面調査を行った:代表者澤田が行った、ミャンマー在住のランスー語協力者に対する追加の語彙調査、分担者加藤が行った、日本在住の複数のカレン語話者に同時に対する語彙・文法調査、分担者大塚が行った、ミャンマー在住のアショー・チン語及びティディム・チン語話者に対する語彙・文法調査などがこれに当たる。(2) インターネット上で閲覧可能な少数民族言語による動画の音声書き起こし:分担者加藤は、職種・階層・地方の人へのインタビューや寸劇の書き起こしを行った。(3) 謝金や外注によって、様々なデータの収集や整備を行った:分担者大塚がアショー・チン語話者に依頼して行った語彙・テキストデータの入力分担者倉部がジンポー語等の話者に依頼して行った、これまで収集した民話約150編の英訳、代表者澤田が、研究対象とするビルマ系少数民族言語の語彙とビルマ語の語彙の対応関係を精査するために行ったビルマ語文献コーパスの整備などがこれに当たる。(4) 先行科研である「ビルマ危機言語科研」などによる現地調査で得たデータ・研究成果を、国内外の学会やワークショップなどでの口頭発表、学術雑誌への投稿論文や語彙集などの形で公開した。(5) 年度末にZoomで会合を持ち、今年度の総括と来年度の展望について話し合った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現地調査ができなかったことは極めて遺憾ではあるが、この制約の中でも各メンバーが手を尽くしてデータの蓄積や整備を行ってきた。Zoomでも複数話者を対象とした調査が十分可能なことや、インターネット時代ならではのデータソースの存在もメンバー間に共有され、先行科研による基礎的な記述がある程度行われている言語の語彙・文法に関する追加調査であれば十分可能であることも再確認できた。オンライン上の音声・動画資料には音質上の限界があるが、一方でそれは、限られた現地調査の時間内では十分に触れることのできない様々な方言・階層・職種・ジャンルの言語データに触れることを可能にしてくれるものあり、この種のデータを活用した調査とインテンシブな現地調査は互いに補完し合う関係にあると言える。この状況下で様々な制約がつきまとうものの、可能な限りのデータを収集して対象地域の言語の姿を明らかにし、さらに進んで言語群のなす体系や相互の類型論的位置づけを解明するという本研究のスタンスは継続して行きたいと考える。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍に加えクーデター後のミャンマー国内の混乱もあり、引き続きミャンマー国内での現地調査が不可能なため、今年度同様、日本国内に在住する少数言語の話者を対象とした調査がメインとならざるを得ない。当面はZoomのような電子会議ツールなどを用いた準対面調査が主となるが、リアルな対面調査も継続的には難しいとしても少しずつ実施する予定である。さらに、過去の現地調査によって得られた音韻体系記述の精密度を上げるための音声データ入手と分析、録音およびオンライン上の動画からの書き起こしによる電子化テキスト(録音に基づく場合はその音声も)の拡充などを行い、各言語の記述の幅と豊かさを増すことにも力を注ぐ。一方で,本科研で今年度行った調査や「ビルマ危機言語科研」などによる現地調査で得たデータ・研究成果の公開を、口頭発表や学術雑誌への投稿、語彙集の刊行などの形で引き続き行っていく。最新の現地情報や研究動向の共有も、Zoomを利用した打ち合わせによって行う。
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