本年度は、日本各地の鵜飼技術や知識、物質文化をめぐる調査を実施したとともに、日本列島における鵜飼の歴史資料を収集して整理し、1500年間におよぶウ類と日本人のかかわりを示した鵜飼年表の作成などもおこなった。また、鵜飼に関わる考古学や歴史学、絵画史、民具学、鳥類学、魚類学などの専門家と意見交換や研究会を実施し、文系/理系を問わず、通時的/共時的な視点から日本列島の鵜飼文化をまとめた図書を刊行する道筋を立てた。この図書は卯田宗平編『鵜飼の日本史―野生と権力、表象をめぐる1500年』として2024年9月に刊行予定である。この図書を通して、古墳時代や平安時代における鵜飼のありよう、権力や庇護の必要性、漁を支えるウ類の生態、鵜飼をめぐる芸術の展開などを明らかにした。そのうえで日本人のアユへのこだわりやウ類を利用した漁法の多様さ、ウ類をドメスティケートしない要因といった日本独自の事情も導きだした。いずれも鵜飼文化が映しだす日本の姿を問うたものである。このほか、「中国の鵜飼からみる長良川鵜飼の特徴」『長良川鵜飼習俗調査報告書』(2023年、岐阜市)、「中国の鵜飼からみた日本の鵜飼の特徴」『三次鵜飼と日本の鵜飼』(2023年、広島県立歴史民俗資料館)、「ダチョウ飼育を可能にする条件-カワウの人工繁殖から考える」『BIOSTORY』39号などに研究成果をまとめ、一般に公開した。さらに、第25回全国鵜飼サミット(宇治市文化センター、2023年10月19日)や令和5年度文化財講座・秋の特別企画展記念講演会(広島県立歴史民俗資料館、2023年10月14日)、第20回生き物文化誌学会(東京大学弥生講堂、2023年6月25日)において口頭発表をおこなった。
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