研究課題/領域番号 |
20H01450
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
赤井 伸郎 大阪大学, 国際公共政策研究科, 教授 (50275301)
|
研究分担者 |
湯之上 英雄 名古屋市立大学, 大学院経済学研究科, 准教授 (10509590)
広田 啓朗 武蔵大学, 経済学部, 教授 (10553141)
齊藤 仁 和歌山大学, 経済学部, 准教授 (50707255)
倉本 宜史 甲南大学, マネジメント創造学部, 准教授 (70550309)
宮錦 三樹 中央大学, 経済学部, 助教 (70733517)
足立 泰美 甲南大学, 経済学部, 教授 (80734673)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | インフラ / 教育財政 / 社会保障 / 広域行政 / 市町村合併 |
研究実績の概要 |
2020年度は年度初めから新型コロナウイルス感染症の感染者拡大を受け,研究代表者も分担者も大学教員であることから研究・教育環境をオンライン中心に切り替える必要に迫られた。しかし,全体会合と研究発表セミナーをオンラインで実施(9月14日)し,例年通りに各研究の進捗状況の報告と,まとめのための議論を行うなど,柔軟に共同研究を進める環境を整えて,研究を進めることができた。そして最終的な研究のまとめに向けて,9本の学術論文の公刊(査読付き研究雑誌へは,海外雑誌に4本,国内雑誌に3本を掲載)を行った。また,14回の学会報告を実施するなど,一定の成果を挙げることができた。 具体的には,研究代表者は都市のコンパクト化をキーワードに研究成果をあげている。まず,都市の中心部に人口が集中することをコンパクト度の高さとして考え,都市のコンパクト度が上昇するほど地価が上昇する傾向と,特にその傾向は住宅地において強いことを示した。地価の上昇は社会インフラを供給する上で,1単位の供給単価を高めることになり,集積のデメリットを示唆する結果となった。 研究分担者は日本の投資的経費に焦点を絞り,Propensity Score Matchingを用いてコモンプール問題を実証的に明らかした研究も行った。投資的経費の中でも,都市計画費・公園と道路橋りょう費が市町村合併の直前に増加している。個別の歳出分野に対する研究では,教育分野において日本の高齢化は地方公共団体の支出する教育費を減らすことを示した。労働分野では,退職給付制度の有無およびその支給水準を所与とした上での,雇用確保措置の義務化後の企業の高齢者雇用制度の選択行動を明らかにした。特に,退職給付制度がある場合,および支給水準が多い場合には,退職を促進させて高齢者雇用制度で再び雇用する方法を採用する傾向が明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度においては,当初計画では国内外の現地調査を予定していたが,新型コロナウイルス感染症の感染者拡大を受け,実施できなかった。このため,研究計画の修正を要したが,それ以外の部分ではおおむね順調に研究を進めることができた。 具体的には,研究・教育環境を早期にオンライン中心に切り替えることができたため,全体会合と研究発表セミナー,ユニット別の会合を計画どおり実施できた。また,学会やセミナーでの研究発表も,オンラインでの開催に変更になった場合は,予定通りに参加できた。 その結果,学会報告は研究代表者と分担者により14件が行われた。国内外の専門を同じくする研究者との議論を実施することで,それぞれの研究を進めることができた。また,全体会合を9月14日に実施し,研究代表者と分担者は進捗状況,ならびに研究成果の発表(「科研セミナー」を開催)を行った。そのほか,分担者は2つのセミナーでの研究発表も行っている。 また,上記の学会やセミナーでの発表の成果は,公刊された9本の論文に表れている。それぞれの研究は研究雑誌や報告書へ掲載されており,順調に研究の成果をあげることができている。このほか,研究成果の一部は新聞記事(中部経済新聞,2020年10月23日)でも紹介されている。
|
今後の研究の推進方策 |
地方公共団体全体の財政については,財政健全化法の導入の効果や地方財政再建に関する実証研究を継続する。特に,Difference in Difference推定やSynthetic Contorol法を用いて,因果関係に注意を払いながら頑健な推定を行う。市町村合併に関する研究は“Do municipal mergers internalise spatial spillover effects? Empirical evidence from Japanese municipalities”に対して学術雑誌からの修正要求が来ており対応する。 インフラ分野の「水道事業における規模の経済性の測定-長期費用関数と短期費用関数の推定より-」は,『公共選択』での掲載準備をしている。また,「水道事業における規模の経済性は変化したのか―市町村合併に経験により-(仮)」として,市町村合併の前後で,水道事業における規模の経済性がどのように変化するのかを検証する。また,「汚職発覚による歳出への影響の検証-都道府県別データによる実証分析-」では実際に公務員の汚職が発覚した経験のある地方公共団体への聞き取り調査を行う。 教育分野では,"The effects of population ageing on public education in Japan : A reinterpretation using micro data"の改訂および学術雑誌への投稿を予定している。特に,どのような高齢者が教育政策に対して支持するのかを個票を用いて検証する。このほか「学校統廃合が市町村教育財政に与える影響」と「公立大学の費用構造-規模・範囲の経済性」も,引き続き改訂を進め,2021年度中の公刊を目指す。また,「教育投資における公的部門と民間部門の代替・補完関係の検証」では,わが国の教育投資水準について,公的投資と私的投資の変遷に注目し,その代替・補完関係を検証する。 社会保障分野では,雇用確保政策における定年年齢の引上げが行われるなかで,家計の就業継続および年金給付の選択行動が変化するかをアンケート調査により検証する。
|