研究課題/領域番号 |
20H01450
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
赤井 伸郎 大阪大学, 大学院国際公共政策研究科, 教授 (50275301)
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研究分担者 |
湯之上 英雄 名古屋市立大学, 大学院経済学研究科, 准教授 (10509590)
広田 啓朗 武蔵大学, 経済学部, 教授 (10553141)
齊藤 仁 和歌山大学, 経済学部, 准教授 (50707255)
倉本 宜史 京都産業大学, 経済学部, 准教授 (70550309)
宮錦 三樹 中央大学, 経済学部, 准教授 (70733517)
足立 泰美 甲南大学, 経済学部, 教授 (80734673)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | インフラ / 教育財政 / 社会保障 / 広域行政 / 市町村合併 |
研究実績の概要 |
2021年度も昨年度と同様に,新型コロナウイルス感染症の感染者拡大状況を受け,全体会合と研究発表セミナーをオンラインで1回(8月30日,31日の2日間)実施した。そして,研究の方向性の確認と,まとめの議論を行った。またユニット別の会合も随時実施し,研究を進めた。研究のまとめにあたり,論文の作成と研究雑誌への投稿を終え,順調に査読付き雑誌等へ14本の学術論文の公刊(査読付き研究雑誌へは,海外雑誌に1本,国内雑誌に4本を掲載)を行った。次年度以降の国内雑誌への掲載決定の論文も1本存在する。また,10回の学会報告,上述の研究発表セミナー以外でも8回のセミナー報告も実施した。3本の研究に関する一般紙や業界紙の記事も執筆できた。学会等での研究報告が論文執筆等と繋がっており,研究を確実に進めることができたと言える。 具体的には,研究代表者はコロナ禍のGoToトラベル事業に着目し,個人の旅行代金への支援を一定期間の特定地域における価格変更として扱うDID分析を行っている。この価格変更は,有意に高速道路利用の需要を喚起していることが明らかになった。また,個人の移動に関しては,都市のコンパクト度が高いほど,1回の移動のコストを引き下げ,近距離の移動への需要を増やす結果を明らかにした。 分担者は,公共部門の事業体の実態把握を行った。例えば,市町村の会計操作に着目した研究が行われた。特に,地方財政健全化法の導入により,市町村は財政の持続可能性を示す指標として総務省が確認するフローの赤字を改善する一方で,指標ではないストックの債務残高を増加させることを明らかにした。また,公立大学の費用構造を明らかにし,大学統合や学部・学科等の再編における自然科学系あるいは人文社会科学系のそれぞれの領域内での統合や拡大,また,研究活動の機能を同時に持たせることが,財政効率の観点からは支持されることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度も国内外の現地調査を予定していたが,新型コロナウイルス感染症の感染者拡大を受け,実施できなかった。このため,聞き取り調査をオンラインで実施するなど,研究方法の修正を要したが,計画自体は若干の修正で済ませることができ,おおむね順調に研究を進めることができた。 具体的には,聞き取り調査,全体会合と研究発表セミナー,ユニット別の会合を計画どおり実施できた。また,学会やセミナーでの研究発表も,オンラインでの開催が早々と決まったため,予定通りに参加できた。 その結果,学会報告は研究代表者と分担者により10件が行われた。国内外の学会に参加することで,専門を同じくする研究者との議論を通じ,それぞれの研究を進めることができた。また,全体会合を8月30日に実施し,研究代表者と分担者は進捗状況,ならびに研究成果の発表(「科研セミナー」を開催)を行った。そのほか,分担者は8つのセミナーでの研究発表も行っている。 また,上記の学会やセミナーでの発表の成果は,公刊された14本の論文に表れている。研究雑誌や報告書へ掲載されており,順調に研究の成果をあげることができている。このほか,来年度以降の公刊を予定している『日本経済研究』への掲載が決定している研究も存在している。
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今後の研究の推進方策 |
聞き取り調査等を基にした新たな研究に取り組むほか,論文の改訂作業に取り組む予定である。 具体的に地方公共団体全体の財政については,地方財政健全化法や旧財政再建法の影響に注目をして,地方財政の健全化について研究を進めていく。旧財政再建法下において,自主再建か財政再建団体としての再建か,という財政再建の方法の違いによってもたらされる財政健全化の進展の違いをSynthetic Control Methodを用いて分析を行う。また,自治体運営手法(デジタル化など)の効果も引き続き研究に取組むとともに,広域連携の視点を加えて分析を実施したい。このほか,地方公共団体の資金調達と税収漏出に関して,日本証券業協会の「公社債店頭売買参考統計値/格付マトリクス表」を用いて公募債による資金調達等のあり方を検証する。 インフラ分野の研究として,水道事業における費用面の非効率性に関する研究を継続実施する。また,収入面では用水供給事業と末端給水事業における総括原価に基づく価格設定に注目し,損益計算書および貸借対照表を用いての要因の検証を行う。さらに,インフラの配置を柔軟に変えることの困難さに着目し,公共施設の管理計画を作らない状況は,長期的全体的な歳出の抑制を行う意思がないことを意味すると捉え,その行動の要因を分析する。 教育分野では,日本において高齢化が義務教育費にどのような影響を与えるのかを明らかにする研究も継続して実施する。また,わが国の教育投資水準について,公的投資と私的投資の変遷に注目し,その代替・補完関係をVARや動学アプローチを用いて検証する。 社会保障分野では,税財源の確保と給付の適正化に関する研究を継続する。特に高齢者雇用安定法の改正が繰り返し行われるなかで,就業継続と年金給付の選択行動に与える影響を引き続きアンケート調査等で検証を行う。
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