研究課題/領域番号 |
20H01450
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
赤井 伸郎 大阪大学, 大学院国際公共政策研究科, 教授 (50275301)
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研究分担者 |
湯之上 英雄 名古屋市立大学, 大学院経済学研究科, 教授 (10509590)
広田 啓朗 武蔵大学, 経済学部, 教授 (10553141)
齊藤 仁 和歌山大学, 経済学部, 准教授 (50707255)
倉本 宜史 京都産業大学, 経済学部, 准教授 (70550309)
宮錦 三樹 中央大学, 経済学部, 准教授 (70733517)
足立 泰美 甲南大学, 経済学部, 教授 (80734673)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | インフラ / 教育財政 / 社会保障 / 広域行政 / 市町村合併 |
研究実績の概要 |
科研セミナー(8月30日)や研究発表セミナー(6月24日)をオンラインで実施した.また全体・ユニット別の会合も学会等で集まれる機会に実施した.成果は順調に査読付き研究雑誌等へ掲載できた.具体的には,10本の学術論文の公刊と5回の学会報告,上述のセミナー以外での13本の報告,そして,研究に関する一般紙や業界紙の記事を2本執筆した. 特に,研究代表者は移動距離の短さを都市のコンパクト度の指標として,コンパクト化の進展が住民の健康状態を良くし,社会保険に係る財政支出を抑制する効果を示した.成果は「コンパクトシティが健康に与える影響の分析」(沓澤隆司氏,竹本亨氏との共著)として『会計検査研究』にて公刊した.また,自治体の合併前後で起きる債務の変化を理論的に解明し,成果を“The Fiscal Common Pool Problem, Municipal Mergers, and Spillovers”(Tsuyoshi Goto氏との共著)としてPublic Finance Reviewにて公刊した.また,COVID-19の人口当たりの感染者数や死亡者数の差異が,住宅地や商業地に対する選好への変化を通して地価に与える影響も明らかにし,「COVID-19の感染状況と被害が地価に与える影響の実証分析」(竹本亨氏,沓澤隆司氏との共著)として『日本財政学会叢書 財政研究』にて公刊した. また,分担者は,学校教育施設の維持・更新時に自治体が財源不足額を地方債で補填した場合に,学校教育施設事業債の現在高や元利償還額の大きさによって,将来への積み立てが妨げられる可能性などを示した.このほか,全国の自治体合併後の変化についてアンケート調査を実施し,職員研修が人件費に与える影響も検証した.このほか,海外の研究雑誌への掲載決定論文も2本存在するなど,一定の成果を挙げられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画はおおむね順調に進めることができた.具体的には,全体会合と研究発表セミナー,ユニット別の会合を計画どおり実施できた.また,学会やセミナーでの研究発表も予定通りに実施できた. 具体的に,学会報告は研究分担者により5件が行われた.参加学会は,92th Annual Meeting in Southern Economic Association,日本地方財政学会 第30回大会,生活経済学会第38回大会,日本財政学会第79回全国大会,日本経済学会2022年秋季大会である.国内外の学会に参加することで,専門を同じくする研究者との議論を通じ,それぞれの研究を進めることができた.また,全体会合として,科研セミナー(8月30日)と研究発表セミナー(フィナンシャル・レビュー論文検討会議と共催,6月24日)をオンラインで実施し,研究代表者と分担者は進捗状況,ならびに研究成果の発表を行った.そのほか上述のセミナー以外で13本のセミナー報告も行っている. また,上記の学会やセミナーでの発表の成果は,公刊された8本の論文に表れている.それぞれの研究は『会計検査研究』,『財政研究』,『統計研究彙報』『フィナンシャル・レビュー』『地方分権に関する基本問題についての調査研究会報告書・専門分科会(座長:堀場勇夫)』,『研究年報』,Public Finance Review, Economic Analysis and Policy,といった研究雑誌や報告書へ掲載されており,順調に研究の成果をあげることができている.このほか,分担者により研究に関する一般紙や業界紙への記事の掲載も2本存在している.
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今後の研究の推進方策 |
2023年度も学会・セミナー発表と論文の改訂作業に取り組む.具体的に,地方自治体全体の財政を都市構造から考察する,コンパクトシティ形成の要因と効果に関する一連の研究を書籍の形でまとめる作業を行う.研究期間中の刊行を目指す. 財政ルールに関しては,地方財政再建特別措置法(旧再建法)の効果を検証する.財政破綻状態に陥り,自主再建を選択した団体と,国の管理下での再建を選択した団体の再建行動を比較する.また,政策競争の評価では,自治体の超過課税制度に焦点当て,分権的政策の因果効果を計測する.その際,Spatial Difference in Differencesを用いて空間的相互作用を考慮する.また,自治体政策と家計行動に関して,2022年度に取得した家計アンケートデータと市町村の決算統計データなどを接合し,防災政策の実施と家計行動の変化を分析する. インフラ分野(水道)に関しては,料金の改定頻度に着目し,財政状況に応じての料金改訂の実施とその要因をイベントヒストリー分析で探る.また,公共施設総等合管理計画の策定に関して,公共サービスの供給費用や価格への意識の違いの要因を示す.広域化に関して,平成の自治体合併時に行われた水道事業の統合効果を検証する.教育分野では,高齢化が義務教育費に与える影響に関する研究を継続する.なお,教育財政に関する一連の研究を取りまとめて,1冊の書籍にする準備を始める.社会保障分野では,地方債に注目し,関係機関に聞き取り調査を行う.そして,自治体の個票データを用いて,自治体の資金調達とその運営について明らかにする.また,人口減少を背景に給付のダウンサイジングが求められるなかで,広域化・民営化による適正な給付の可能性を探る.
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