研究課題/領域番号 |
20H01460
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
岩下 明裕 北海道大学, スラブ・ユーラシア研究センター, 教授 (20243876)
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研究分担者 |
福原 裕二 島根県立大学, 国際関係学部, 教授 (30382360)
BOYLE EDWARD 九州大学, 法学研究院, 助教 (30760459)
黒岩 幸子 岩手県立大学, 公私立大学の部局等, 教授 (80305317)
益尾 知佐子 九州大学, 比較社会文化研究院, 准教授 (90465386)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 北東アジア / 領土 / 主権 / 地政治 / ボーダースタディーズ |
研究実績の概要 |
本研究では、ユーラシアや諸外国の事例を参考にしつつ、北東アジアに関わる国境・領土をめぐる社会構築と実態の連関を、時系列と地理スケールを変えることを通じナショナルとローカルのフレームにおいて析出する。 ローカルとは境界に接する自治体レベルの場合もあれば、国境点(まち)そのものもあり、スケールは伸縮される。フレームの相互作用を検証し、領土をめぐる社会構築が、ある場合にはナショナリズムの激化と相関し、ある場合にはこれを鎮静化させる二面性パターンを解析する。国境を越えるローカルな場からの「メッセージ」を学術的に総合し、領土をめぐる社会構築を相対化し乗り越える道筋をつくるのが本研究の狙いである。 空間や境界をめぐる諸問題を学際的に研究するボーダースタディーズ(境界研究)の理論と枠組をもとに、本研究では北東アジア地域の「領土」(領海、領空、経済水域などを含む)をめぐる表象を実態との連関において検証する。 争点化されている空間をめぐる対象は、ロシア、中国、韓国(北朝鮮)、日本など北東アジア地域の構成国の社会的な表象の構築の分析を中心とするが、域外の諸地域・諸国などにも目配りし、比較を通じて、それぞれの「領土」に関わる実態と表象の特性を明確にする。かかる作業を通じて境界地域を安定と平和の表象に転換するための諸策を世界的研究の文脈のなかで再構築する。 なお、昨今のコロナ禍の世界的な広がりは、ナショナルとローカルのフレームを大きく揺さぶりつつあり、当該研究テーマたる国家や領土を分析する際、実態においても社会構築においても考慮せざるをない影響力をもつ。本研究はこれらについても目配りしつつ、地域の変貌を追跡する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度も引き続き、新型コロナウィルスの問題もあり、国内外の出張打ち合わせや現地でのフィールドワーク及び調査は困難であったが、昨年度構築したオンラインのネットワークを駆使するとともに、蔓延防止措置などが緩和したタイミングを狙って、集中的に国内での調査を行った。 北東アジアの現在の諸問題に関わる分析が、地政治という新たな枠組みを通じて(研究分担者、福原と益尾も執筆し、研究代表者の岩下が編集した)最新の研究書『北東アジアの地政治』(北海道大学出版会)として刊行されたことは当初計画以上の進捗と言える。 さらにこれに関連するテーマでのセミナーを数多くオンラインで組織した。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルスも一時期の状態に比べれば、底をうった感があるが、それでも以前、出張や調査には制限がある。とくに海外出張や調査のスケジュールはいまだ可視化するのが難しく、引き続き、オンラインを通じた成果の発信が軸となると思われる。 また2022年2月末に始まったロシアによるウクライナ侵攻が、ロシアの現地調査はおろか、学術交流それ自体に暗雲を投げかけている。近年の中国国内の状況をもあわせて考えるとき、本研究のテーマは、欧米や韓国などとの協力を軸とし、理論的な分析をより志向する方向に推移せざるを得ないと考える。 もっとも個人レベルでの学術的な協力は可能な限り、推進することを前提に作業を進めている。
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