研究課題/領域番号 |
20H01503
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
大木 良子 法政大学, 経営学部, 教授 (20612493)
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研究分担者 |
石原 章史 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (80643668)
若森 直樹 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 講師 (50770921)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | プラットフォーム / マルチホーミング / 競争政策 |
研究実績の概要 |
2020年度は、初めての試みとして消費者に対するアンケート調査を行った。当初、グループインタビューを行い調査対象を絞り込んでから、オンラインアンケートを実施する予定であったところ、新型コロナウィルス感染症による影響から、インタビュー実施のめどが立たなかったため、オンラインアンケートの設計を変更することにより対応した。またグループインタビューに充てる予定であった予算を繰り越し、2021年度に特定のプラットフォームについて追加のオンラインアンケート調査を実施した。 調査対象としては、消費者が利用している主要なデジタルプラットフォームである音楽配信、動画配信、ホテル予約、オンラインフリーマーケット、比較対象として従来型のプラットフォームであるゲーム(ゲーム機)、決済手段について調査を行った。それぞれの詳細な利用状況やマルチホーミング・シングルホーミングの理由、それぞれのプラットフォームを選択する理由などを明らかにすることができた。これらの定性的なデータは、消費者のプラットフォーム選択の実態に加え、理論モデルを設計するための仮説構築にも繋がった。加えて、2020年、2021年と2年分のデータベースを構築することが出来たため、この期間における利用状況の変化を見ることが可能になり、実証分析の幅をより広げることができた。 以上の調査の設計やデータの解釈に役立てるために、理論的研究を並行して実施した。その成果の一端としては、2020年5月には、日本経済学会2020年度春季大会において、大木と石原の共同研究論文であるExclusive Content and Captive Consumers in Platformsについて報告を行い、討論者や参加者から有益なコメントを頂いた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度に実施できなかったグループインタビューを、充実したオンラインアンケート調査に切り替えた結果、消費者のプラットフォーム利用の実態を把握するために十分なデータを入手することができた。そのため、当初の研究計画どおりに進んでいると判断している。 また、マルチホーミングの実態を把握する調査はこれまで公にされている事例がほとんどないため、調査初年度である2020年度は調査設計や委託する調査会社との綿密な準備等に非常に大きなコストがかかったが、その結果、2021年度以降の継続的な調査の実施を効率的に行える仕組みを構築することができた。 さらに、2020年度調査の結果を2021年度に取りまとめることができ、研究計画で当初から予定していた政策担当者や関心の近い研究者に共有することができた。これにより、本研究課題の大きな目的であった消費者のプラットフォーム利用の実態把握とその公表については早い段階で実現できたといえる。また結果を共有した政策担当者や研究者からは、本研究課題における継続的な調査の実施とそれを活かした実証分析の重要性について指摘を受け、本研究課題の問題意識の妥当性また、課題への関心の高さも確認できた。 加えて、調査設計やデータの解釈にあたり、プラットフォームビジネスについての理論的な整理を行うことができた。この作業は、2021年度以降の新しい理論モデル構築とそれによるプラットフォーム市場の競争メカニズムの分析に役立てられている。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度以降は、以下の4点に注力する。 1.2020年度の予算により実施した消費者アンケートの結果を分析しアンケート調査の設計を見直し修正した上で継続的な調査を行う。これにより時系列的なデータベースを構築し、経年での実態の把握に加え、実証分析を行う。 2.2021年度に新たに調査を開始した、分野横断的なプラットフォームの消費者の利用実態のデータを整理し、消費者のプラットフォーム選択、またマルチホーミングの有無が、複数事業展開とどのように関連しているかについて明らかにする。また上記1のデータと組み合わせて、消費者のプラットフォーム選択要因について多角的に分析を行い、結果を取りまとめる。 3.これまでに得られたデータを整理し、消費者のデータに基づいたプラットフォームビジネスの経済学の専門書として取りまとめるため、継続的に執筆を行う。 4.消費者のマルチホーミングの意思決定と、同一プラットフォーム企業(グループ)内の分野横断的なプライシングを抱き合わせ販売の理論モデルを用いて分析し、理論的な整理を行う。 以上4点の調査とその結果の整理、および理論分析より得られた成果について、その都度速やかに公表することを目指している。公表手段としては、まず、本研究を担当する3名がそれぞれに参加している研究者および政策立案者の集まる研究会での報告を予定している。複数回の報告を経て、各方面からのフィードバックを得ながら、日本語での専門書執筆により、得られたデータを経済学的に整理してなるべく早く公表することを目指している。またそれらの整理に基づいて、実証論文、理論論文への発展を目指している。
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